ホテル

ドアマンが扉を開くまでもなく電動ドアが勝手に開く。
綺麗に敷き詰められた絨毯。歩けば、靴が沈みこむ。
ここは日本でも有数の高級ホテル。
綺麗なフロントのお姉さんが「ご予約は?」と言う。
僕は名前を言う。
お姉さんはキーボードをカシャカシャと鳴らし、データを取り出す。
「二泊のご予定でお取りしてあります。ここにサインをお願いします。」
チェックインが終わり、小奇麗なベルボーイが荷物を持ってエレベータ、長い廊下、僕の部屋まで案内してくれる。
「何かございましたらフロントにおかけください。」
そつなく淀みなく、スマートに彼は去っていく。
さて、やっと落ち着ける。
ベットにあおむけに横たわり目を閉じる。外の喧騒がかすかに聞こえる。黙って息を殺す。問題はない。
しばらく両手両足の感覚を確認する。まだ大丈夫。まだいけるのか?自問する。答えは出そうにない。
風呂を入れて、入ることにした。
湯船につかると、体のこわばりが幾分溶けてくれる。
すべてがスローモーションのように、自分で自分の動きを眼で追っていく。
体の芯まで温まってきたころには、幾分気分も回復気味だ。
さっぱりとしたとは、このことかもしれない。
洗いたてのシャツに手を通すと、おなかが減ってきた。
僕は部屋の明かりを消して、外に出る。
長い廊下を通り、幾階もエレベータで通り過ぎ、フロントに鍵を預ける。
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ホテルをベースにし、ぶらぶらした2日を過ごし、チェックアウトに漕ぎつける。
支払いを現金で済まし、財布をしまう。
まだ幾分体の動きはぎこちないけれど、まだやれそうだと漠然と思う。
自動ドアから外へ出ると、固いアスファルトが靴の底で鳴った。
リーガロイヤルホテル メリッサ