牛乳タンクローリー

幾分長い信号待ちから、信号が青に変わってしばらく走ると、私の車は、鏡のように磨かれたタンクローリーのタンクの後ろを走り始めた。
緩やかなカーブで、タンクの横に「・・・牛乳」の文字が見えた。
この辺りにある牧場から牛乳をしこたま積んで出てきたらしく、重たそうだ。
タンクはステンレス製で、その表面は辺りの景色を映しこんで光っていた。
前を見ると、自分が運転している姿がタンク後部の凸面に写り込み、流れる車窓と共に見えていた。
タンクローリーの凸面を見ながら運転していると、実際の運転の感覚がずれそうになる。
運転ゲームでもしているような錯覚が襲ってくる。
そのたびに周りへ視線を移し、現実にアクセルを踏んでいる感覚を取り戻した。
それでも、田舎の一本道を走っているせいか、タンクの中に吸い込まれそうになる。
タンクとの距離を余計に取って離れても、凸面の中の自分が小さくなるだけで依然として見えていた。
いや、見てしまっていた。
信号で止まると、嫌でも鏡を覗くように自分を見た。
運転席に座ってハンドルを握っている姿を自分では見たことがないので余計に気になるのか、いよいよ凝視してしまう。
タンクが動き出し、自分自身を見ながらアクセルを踏んで行く。
ふと、自分がタンクの鏡の中から自分を見ている気がした。
危ない、と思いアクセルを戻すと、遠ざかった。
嫌な感覚が背中を襲った。
タンクの中に閉じ込められ、運転しているのは映った影だった。
タンクから離れないように慎重にアクセルワークを行い、どうしようかと考えた。
まだ目的地は遠い。
そうこうしている内に、車がトンネルに入った瞬間、ふっと、体が車のシートに戻っていた。
急いでスピードを落とし、ハザードを点けると、追いした別の車がタンクとの間に入って行った。
トンネルを抜けると、さっき追い越した車が、タンクローリーにぴったりと、磁石で引っ付いたように走りながら遠ざかった。
私はゆっくりと、路肩に車を寄せて停車した。
自分の手をハンドルから離して、じっくりと手のひらを見た。
指を指でつまんでみた。
不確かな肉体感覚が、そこには存在しているようだった。


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19時発のバス

プルプルプル・・・プルプルプル・・・
携帯電話の呼び出し音が耳障りに聞こえた。
音は、鞄の中から取りだされ、さらに大きくなった。
プルプルプル・・・
「はい。あたし。エー!」
19時発のバスは街の中で人々を吸い込み、通路には隙間なく人が立ち、堤防の上の道路を、ベットタウンへ向けて走っていた。
切られる様子のない携帯電話に、窓際に座っていたサラリーマンが
「うるせー」
と、見えない声へ声を上げた。
「ヤベー。切るよ。あはは・・・」
「だってサー・・・・」
電話ではなくても、女達の声が騒がしく続いた。
「うるせー」
サラリーマンはもう一度言った。
他の乗客は黙って、暮れかけた車窓に目線を送っていた。
バスの運転手が
「他のお客様のご迷惑になりますので、車内ではお静かに願います。」
と、細部がよく聞き取れない車内放送をした。
「ヤベーよ。ははは・・・・」
「それでサー」
女達は、少し声を落として続けた。
と、プルプルプル・・・プルプルプル・・・
再び、電話の呼び出し音がした。
女が電話のボタンを押して耳に当てると、コトンと電話が床に落ち、女は消えた。
女の連れは、床に落ちた電話を拾い電源を切ってポケットに入れた。
停留所に止まったバスの扉がプシューと開き、おばあさんが上がって来た。
座っていた乗客の一人が席を立ち、おばあさんがそこへゆっくりと腰を落とした。
運転手は、ミラーの中でそれを確認し、
「・・・ご注意ください・・・」
と、ゆっくりとバスを発車させた。
車窓に見える家々の窓には、明かりが点き始めていた。

お疲れ様の一日に・・・

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ビジネスホテル

「いらっしゃいませ。」
21時。
うっすら髭の生えた男の受付が、事務的に対応を始める。
私は名前を言って、チェックインを行う。
「代金は先払いとなっております。」
と言われる。
先払い・・・・
どこか信用されていないような感じを受ける。でも、最近はその方が多いのかもしれない。
昔、水戸黄門でよくあった、旅籠代の到着が遅れ、店の手代として働かされる黄門様。
テレビの中では楽しそうに、廊下の拭き掃除をしていた。いや黄門様は風呂焚きか?
私は、その水戸黄門の中で、日本手ぬぐいが、部屋の手拭掛に掛けられた光景を思い出していた。
さて、代金を払いキーを受け取り、部屋へ向かう。
自分の荷物は自分で運ぶ。出張で、スーツに、いつもより多くの物を突っ込んでいるのでより重たく感じる。
ここは、ビジネスホテルなのだ。
部屋に入ると、ドアの直ぐ後ろに、20センチ以上蹴上がらなくてはいけない、風呂とトイレのユニットバスがあり、そこを二歩で通り過ぎると
壁にへばりついた机と、ベットがあった。
机とベットの間は30センチぐらいか?
鞄をその隙間の床に置き、どこでくつろげば良いのか部屋を見回してみるが、椅子はない。
汗みどろのままベットに座るわけも行かず、服を1個しかないハンガーに吊るし、風呂に入ることにした。
裸になって、風呂に入る前、トイレを使うが、
便器に座ったら出入り口のドアに、右足がぴったりとくっつき、足を充分に開けない狭さだ。
左肩の直ぐ横にも小さな洗面台があり、便器にはまったように用を足す。
先程の洗面台で手を洗おうとすると、列車のトイレ備え付けの洗面台とまでは行かなくとも、小さい。
その小ささに合わせて、手を細かく動かして洗う。それでも水が外に跳ねて、神経が休まらない。
バスタブに入って、石鹸を探すがボディーソープしかなく、仕方なく泡立ちの悪いそれで洗う。
体を小さくしながら洗い終わり、洗面台で歯お磨こうと、アメニティーの歯ブラシを空けて使ってみると、太い釣り糸の束で洗っているような感覚を覚える。
とりあえず体を拭いて部屋に戻るが、室温は高いままで、どうも自分で調節が出来ないらしい。
備え付けのスリッパも、風呂上りの汗で濡れ、ひっついてくる。
止まらない汗を、無駄に大きいバスタオルで拭き拭き、さっきコンビにで買った缶ビールを開けて喉に流しこんだ。
テレビをつけてみる。
ベットにやっと腰を落とし、しばらく汗を乾かし、ビールを飲む。
ベットでは寄りかかれる所がなく座りが悪い。
暑いので窓を開けようと思って見てみたが、ここ数年動かした跡がないようなホコリを見て止めた。
500mlのビールは空っぽになった。
次に、旅では不足する野菜を採るために、野菜ジュースを空けて胃に流し込む。
そうこうする内、やっと汗が下火になり、下着を着けて、ベットの上で初めて横になる。
ベットの上掛けがマットレスの下に挟み込まれているのを引きずり出して、寝返りが打てるようにする。
テレビは地元の今日のニュースを流している。
チャンネルをまわしてみるがこれと言った興味を引く番組はなく、有料チャンネルも見てみるが、直ぐに視聴は終わった。
家で見るテレビとは違う?
テレビ画面が目の前にあるので、疲れ目にはきつい事に気づき、消す。
今日の仕事を思い出し、明日もきつくなるだろうと想像する。
この部屋で休むしかないのだが、疲れが取れるような気がしない。
ふーっと息を抜いてみるが、部屋の狭さで跳ね返ってくるような感覚がする。
ホテルの廊下を、運動部の学生の団体か?妙な敬語で話し、笑いながら歩く音が部屋のドアの直ぐ外に聞こえる。
隣の部屋の咳払いが聞こえる。
仕方なく、観もしないテレビをつける。
部屋の明かりを消して、跳ねるベットに横たわる。
やれやれ・・・・・。
明日も大変だ。
夜中に目が覚め、時計を見てみると、2時を過ぎた頃だ。
寝汗をかいているので、下着を替える。
部屋の外の廊下から、笑い声と、ドアをコツコツ叩く音、次にバタンと閉める音がしては消えていく。
どうやら、学生達は楽しい夜を過ごしているらしい。
それから、私は便所にはまって用を足し、机に足をぶつけながらベットに戻り、眠れないままの目をそれでも閉じて、うつらうつらと朝を迎えた。

昔ながらの手拭掛け。
昔は、お客さん用に用意してある家が多かったようです。
便利です。

手拭掛け443yk

ボクサー

ドス!
俺のボディーに、入れやがった。
ちくしょう!いいセンスしていますねえ。
右、右!
なかなか手ごわいやつだ。
いや、手ごわいに決まっている。
なんたって、世界ランカーだもんな。
俺は、普通の格下ボクサー。
バス!イテ!。
ジャブ当ててくるねえ。
俺も、反撃。
右、左。ドス!
当たったぜ。
でも、効いてねえな。
俺もそんなに効いてねえけど、痛いよな。
足はまだまだ動くねえ。
セコンドが何か言ってらあ。
何?聞こえねんだよ。
やってるのは俺。
横から口出すなって!
グワン!イテ!
鼻、ぶちやがった。
鼻血出ちゃうよ。もう!
俺もお返しだ。
グワン。くそ!
外されてカウンターもらっちまった。
あれ?
足がふらつく?
やべえやべえ。
距離を取ろう。
シュシュ!
ほら。
いいジャブ入ったぜ。
俺だってそこそこやるんだって。
ハアハア。
結構、息があがってきたか?
鼻血出ちゃ、息が苦しくなるからな。
まあ、未だ出てねえようだ。
そろそろ。
カーン。
おお、ラウンド終了か。
俺が座ると、セコンドが水、ワセリン、パンツ、肩、
F1のピットさながらにメンテナンスしていく。
「いいぞ。この調子で攻めていけ。やられたら距離。いいな!」
おやじさんが耳元で叫ぶ。
しかし、なんでこんな因果な商売しちまったんだろうな。
これしか出来ねえと言えば、納得するかもしれんが。
殴って殴られて。
まあ、どんな商売も一緒か?
「ジャブ。効いてるか!」
おやじさんに聞いてみる。
「ああ、効いてる。お前のジャブ効いてる。」
もっと、俺を褒めろって。
たださえ弱気になっちまうんだから。
いつか言ってやろう。
カ-ン。
さて、仕事だ。
シュシュ!
ジャブ!ジャブ!。
おら!おら!
逃げてんじゃーねえぞ!こら!
バス!
うっつ!
バス!
おおおお。
目に力が入らねえ。
おい!
おいら、何で座ってんだ?
レフリー手ばっかり振るなって!
仕事、終わったか?
情けねーな。
そう言えば、ファイトマネーいくらだっけ?
次、次。
仕事だもんな。
しょーがねえ。
ふーーーー。

仕事ってタイヘン。
ゲームは、楽しい。
Wii Sports ボクシングできるようです。

Wii Sports

仙人の願い

昔々、ある貧しい男が、道端の老人の物乞いに、自分のお昼のおにぎりを恵んでやった所
「これは有難い。願いを三つかなえてやろう。」
とその物乞いが言った。
貧しい男はどうせ嘘のなのだからと思い、
「たくさんの金が欲しい。」
と言った。
老人はおもむろにエイ!と呪文を唱えた。
すると、貧しい男の懐が急に重たくなった。
財布を取り出してみると今まで見たことない黄金が、財布一杯になっていた。
「次は?」
と老人は涼しい顔をして言った。
貧しい男は
「美人で、気立てがよく、何でもてきぱきこなせて金も稼げる、俺に惚れている女房が欲しい。」
と言った。
「条件が多いな。まあ、よしとしよう。」
老人は、またしてもエイ!と呪文を唱えた。
すると向こうの道から綺麗な女性が歩いてきて、貧しい男に向かって
「あなた。今日の晩御飯は何にしようかしら?」
と言った。
どうやら小汚い老人は、世に言う仙人らしく、貧しい男も今度ばかりは本当に信じた。
そして最後の願いを何にするかと考え始めた。
この手の話は良く聞いたことがある。
最後の願いで今までの願いが全て無駄になると言うオチではなかったか?
だとすると、最後は何にするべきなのか?
永遠の幸せを願うか?
いや待て。
そんなことは誰にも定義できやしない。
独身で貧乏な方が幸せと言う偉人だっていたはずだ。
で、あれば・・・・。
そうか!
と、男はひらめいた。
打ち出の小槌がなければ宝は出ない。じゃあ打ち出の小槌を作ってしまえば永遠に宝は出し放題。
要するに、俺が仙人になっちまえば済む話じゃないか?!
いや、ちょっと待て。
仙人といえばこの爺さん。いかにも小汚い。
じゃあ、今の俺の状態でままで仙人になれば良かろう。
そうして貧しい男は
「俺を、お前さんのような貧しく小汚い仙人ではなく、若々しく富める仙人にしてくれ。」
と言った。
すると、小汚い仙人は即座にエイ!と呪文を唱えて貧しい男を仙人にした。
あっけなく仙人になれたので、若者はとても喜んで老人に礼を言った。
「礼などとんでもない。ワシの方が礼を言いたいほどだ。」
と老人は長年の夢が叶ったかのうように、顔の深い皺をくしゃくしゃにして、満足げに微笑んだ。
不審に思った男が理由を聞くと老人は
「いやいや、不老不死と言うのは本当に疲れるもんだよ。いつ終わりが来るのだか・・・・永遠の命とは退屈の極みでしかなかった。」
と言った。
「なかった?」
「そう。仙人の決まりで、仙人を止められるのは代わりの仙人を見つけた場合に限られているからね。」
老人はそう言って立ち上がり、尻のホコリを手で払った。
「永遠の命と、何でも出来ることがそんなに不幸だとは思えないが?」
仙人になった男はさらに問いかけた。
「欲望というものはたかが知れているもので、1000年もすれば、毎日が昨日の繰り返しのように感じ出すのさ。
全てに飽きてしまう。すると俺のように道に座っているぐらいしかやることがなくなる。そんな姿を、人は瞑想と言うけどね。
そして、お前さんのようなものを見つけては、三つの願いを試してみるんだ。お前さん何人目だか・・・・2000までは数えたが、止めてしまった。
古今東西のこの手の話は、仙人が繰り返し繰り返し、脱仙人を試みた結果が流布しているだけの話なのさ。」
「信じられないが・・・・」
男は手に入れたばかりの宝物が、実は・・・・と言われても全くぴんとこなかった。
「まあ、楽しくやりなされ。」
そう言うと老人はよぼよぼと歩き出し、立ったまま見送る男の視線からやがて見えなくなった。
それから、仙人となった男は自分の思いのままの生活を始めた。
100年、200年・・・・。
男は夢のような暮らしを続けた。
そして・・・・・1000年後。
男は道端に仙人のような格好をして物乞いをしていた。
「こういう格好をしていないと、誰も恵んではくれないか・・・・。
恵んでくれなきゃ願いもかなえてやれず・・・・まあ格好なんざどうでもいいけど・・・・とにかく退屈だ。
一眠りしよう・・・・」
仙人になった男は一人ごちた。

仙人になりたい話は芥川龍之介「杜子春」が有名。
でも、仙人ってそんなになりたいか?
と子供心に思ったか?

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化粧

彼女はトイレで化粧を直している時に、その異変に気がついた。
化粧が全く落ちなくなっていたのだ。
それは、鏡の横の女性にも起きていた。
彼女は上塗りをして隠したが、帰宅後クレンジングを使った時にそれははっきりとした。
化粧が皮膚にはりつき、全く取れなくなっていたのだった。
それは、彼女だけの異変ではなく、着けたテレビのニュースで既に流れ出していた。
そのテレビで、全世界的に起こっている現象だと、彼女は知ることになった。
祭りの最中だったものは、ふざけた化粧がそのまま顔に張り付いていた。
反対に、綺麗に化粧していた女性は喜んだ。
化粧をほとんど行わない男性は傍観者となった。
科学者は、太陽の活動がある放射線を放出し、それが元で化粧が化学反応を起こし皮膚と同化してしまったのではないかと言った。
そして、皮膚が生まれ変わる過程で、化粧も消えて無くなるのでは?と楽観的観測を述べた。
しかし、数ヶ月経っても全く取れないことが分かると、全世界に失望の声と喜びの声が同時にあがった。
失望した者達は化粧の上塗りを試みたが、下地そのものが化粧の為どうしても上手く化粧は出来なかった。
企業は化粧の上から綺麗に化粧が出来る商品の開発を始めた。
しかし、化粧のベースが出来ていない上に化粧を乗せるのは難しくその開発は難航した。
男性の間では、女性の本当の顔についての議論が沸き起こった。
「化粧を含めて本当の顔である」と言う意見と「化粧が落ちた時が本当の顔である」
と言う議論は元々あったが、
「落ちなくなった化粧は、顔の一部と考えられる。よって化粧をした顔も本当の顔である。」
「いや、あくまで化粧なので、本当の顔はその下、又は化粧をする前の顔である。」
「いや、顔と化粧が同化した事により、本当の顔自体、顔の存在そのものがなくなったのだ。」
などの様々な意見が出た。
テレビのワイドショウでは哲学者、評論家、ファッションデザイナー達が気楽に様々な意見を戦わせた。
しかし、身分証明書等を扱う場所から、実社会に徐々に混乱が発生しだしていた。
入国審査時に、パンダの化粧をした人を通すか通さないのか?
証明書の顔と比較しようにも、化粧が判断の邪魔をしてしまい分からなくなっていた。
また、手にも化粧を施していた者は指紋もぼけてしまっていた。
そして、本人確認が必要なちょっとした手続きも滞る事態が発生しだした。
多くの役人達は全ての判断を停止せざるを得なくなった。
混乱はいよいよ政治的判断で決着する必要性が高まった。
国連に世界中の首脳、哲学者、知識人が集まり、1ヵ月議論に議論が重ねられた。
そして出された結論は
「本当の顔とは哲学的議論であり、判断は個々の自由とする。
であるので、大いに、好きに、どんだけでも、化粧をしてよろしい。
そのため、証明書の写真が役に立たなくなる事は仕方なく、今後一切の証明写真を廃止する。
つまり、人類は顔で、その人か否か、一度会ったか会っていないか等、判断をしない事に決定した。
これは今後、一切の裁判等の目撃証言が無効であることを意味する。
目で見る顔は、もはや個人を特定する為には使用できない。
個人を特定する為にはDNAしかなく、今後一切の証明にDNA情報を埋め込んだICチップを用いる事とする。
また、犯罪等の抑制の為、その携帯を義務とし(体に埋め込む方向で考え)、全てのゲートには自動でチップを読み取り記憶するセンサーを設置する。」
というものであった。
その頃、太陽では・・・・・
新たな核融合が起こり、人類のDNAに深刻な影響を与える放射線を放出し始めていた。

本当の顔とは?

クレンジングを探す

一口香(いっこっこう)由来 番外編

私は浦上天主堂を見た後、ガラス工芸 南蛮船とうい店を目指した。
中里橋を渡って、ちょっと曲がった道、サントス通りを行けば3百メートル足らずか?
暑い4月の日差しがくっきりと私の影を道路に映していた。
しばらく行くと聖具屋があり、日頃近くで見たこと無い神父さんの衣装などを見る。
と、右手に学校らしきものがあり、手に持った地図を良く見ると、どうやら間違ってアンジェラス通りに入ってしまったらしい。
地図を見ると、中里橋まで戻るよりも、対角線、長崎南山高・中の前を西へ横切った方が近いようだった。
問題は、どれだけ坂があるか、住宅街に入って迷わないか?であった。
少々喉も渇いてきた。相変わらず雲ひとつ無い好天だ。
三時前なので、何処かでお茶でも飲みたくなってきた。
目指す、南蛮船あたり、もしくは大橋駅付近、もしくは戻って長崎駅で水をと思い、
アンジェラス通りから路地に入った。
フェンス越しに学校の校庭らしきものが見え、長崎南山高かと思ったが、どうやら上野公園らしい。
と、すれば上野町のこの辺が現在地と言うわけか。
このまま歩いて、如己堂前でサントス通りに入ればなんとかいけそうだった。
一本左への道をやり過ごし、二本目を下ってみる。
綺麗な通りで、看板にもサントス通りと書いてある。
このまま真っ直ぐ行けばと、しばらく歩いていると、元祖の文字を掲げた菓子屋があった。
これも、何かの縁と暖簾をくぐってみる。
どうやら一口香のお店で「榎純正堂」らしい。
歩き観光なので、重たい饅頭をたくさん持つわけに行かず、一個だけでも今食べてみたいのだがと相談すると、一個ずつは売っていないらしい。
逡巡していると、店主が箱入りのものを開けようとしてくれるが、五個入りの袋を我が手に持つと意外に軽い。
これならばと思い、五個入りを購入。
ここで一つ食べても?と聞くと快く、お茶も提供してくれた。
「これは?!珍しい。」
饅頭と思って食べると中が空洞で、その空洞の内側に甘い蜜がある。
「ありがとうございます。こちらは出来立てになりますので、食べてみてください。風味が違うと思います。」
私は、香ばしいゴマの香をかぎながら、また一口ほおばった。
味は、京都の松風を連想させ、品のある甘さだ。
一口香の由来によれば、
~略~
今から百六十年程前、長崎港に向かっていた唐の船が濃霧のため
誤って茂木に上陸してしまいました。
当時、雑貨商だった弊堂初祖一右ェ門がみやげとして頂いた唐饅の製法を会得し、
工夫改良を加えて出来たものが一口香です。
~略~
とある。
なにやら、時のいたずらに遭ったような不思議な気持ちがした。
参考文献
榎純正堂の「一口香の由来」
を参考に、話を膨らませてみたものです。
一口香のように膨らんでいれば・・・・
小説仕立てのものも書いてみましたが、著作権で事前の許可が必要かと思い
エッセー風に書き換え。
榎純正堂さんの「一口香」は楽天になかったので
有限会社茂木一まる香本家を紹介。

長崎が誇る茂木びわを使ったスイーツ茂木一まる香本家一○香5個・茂木ビワゼリー5個

出島の出会い

髪は金色で、肌の色はまっ白。
身の丈は天井より高くて大きく、分からない言葉を喋る。
そんな話は、あっという間に街に広がり、町役人の知る所となった。
そんな事があってから、十数年。
長崎の出島に、一艘の帆船が一年がかりの航海の末たどり着いた。
外国人は直接長崎の街には入れず、出島内のみ出入りが許される。
沖に船を泊め、小船で上陸した。
そんな中に、ある青年がいた。ただの水夫のようで、特徴と言えば鼻の右にホクロがあるぐらいか。
「おお、これが日本か!」
建物は中国の物に似ているが、反りが少ない。男性は前髪を剃り、後ろ髪を結っている。
女性は長い髪を器用にまとめて上げている。
そして、日本人は執拗に頭を下げる。
これは挨拶で、握手や、キスと同じ意味を持つようだ。
同じ人間だが、随分と違う。また、途中寄航したどこの国とも違うある種の丁寧さがあるようだった。
彼は、日本人を見るなりそう思った。
出島の門をくぐって中に入ると、弓状に曲がった道の両側にずらりと木で作られた家々が建っている。
と、上ばかり見ていると、前を横切ろうとした女性が彼の足を踏んでしまい
「すみません」
と女は謝った。彼の靴には跡が残ったが、彼にも跡が残った。
その後女は彼の子供を身ごもった。
しかし、それとは知らず彼は帰国していった。
それから数百年。
現在、出島は博物館として生まれ変わり、多くの観光客が足を運んでいる。
そんな博物館に、日本人の夫婦が観光で訪れた。
彼らが、出島商館が再現された二階の畳の上を、当然靴を脱いで見学し
「へー。やっぱり土足で。」
と、当時の、靴のまま畳の上に立っている西洋人の絵を見ながら感心していると、
その横へ靴のままで歩いてくる西洋人がいた。
「あかんで。靴」
日本人の男が、指差しながら言うと
「オオ。」
と西洋人は慌てて、靴を脱いで手に持った。
言葉は通じないが、分かったようだった。
ふと、日本人の女が
「貴方と同じ場所に。」
と男の肩を叩き、西洋人の顔を見るように促した。
西洋人もそれと分かったのか自分の鼻の右のホクロを指してにっこりと笑った。
「同じところにホクロか・・・」
日本人の男はおもむろに手を差し伸べ握手を求めた。
それに答え、西洋人は丁寧にお辞儀を返した。
笑いがはじけた。
それから日本人の夫婦と西洋人は、手を振りながら一時の交流に別れを告げた。

長崎の旅情に誘われて書いてみました。
旅の疲れで筆は滑っています。
が、過去と現在が不思議に交差する長崎の街はとても楽しい空間です。
訪れてみては?

長崎市内のホテル PC版

長崎市内のホテル モバイル版

ホテルモントレ長崎

タイムマシン

不治の病にかかった私は、法律上タイムマシンの使用が認められた。
使用は一回のみとされ、飛び越える時間設定が問題だった。
早すぎれば、治療法がまだ開発されず無駄足となる。
遅すぎれば、その時代がどのような状況になっているか不明だし、家族とも完全に離れてしまう事になる。
そして、役場での手続き中、私は重大な手続きミスに気がついた。
タイムマシンの使用手続きの際、使用人数を一人としてしまったのだ。
二人で使用するには、タイムマシンの使用手続きを行う一週間前に、
もう一人分の申請をしておかなければならなかったのだ。
戸籍謄本と、結婚していれば婚姻証明書、本人の委任状、身分証明書、写真、印鑑を用意して申請しておかなければ、
タイムマシンの使用手続き時に二人申し込めない事になっていたのだ。
二人目の人の、一週間の信用調査期間が必要と言うわけだ。
そして、手続きを始めたら止める事が出来ない。手続きを止めることは、タイムマシンの使用権放棄を意味した。
なぜなら「タイムマシンの尊厳を守るため。」と言うのが知識人の出した答えだった。
「今、使用手続きを取りやめた場合は、もう二度と使用できません。」
「そこを何とか。これ事態、なかった事にしてくれませんか?」
「駄目です。法律で決められています。申請書をきちんと読まなかった貴方が悪い。」
「悪いのは分かるが、故意ではなく、これはミスなんだ。
女房と一緒に乗れないなら意味がないではないか。
自分の命と引き換えに、家族との別れを選べと言われても、貴方だって選べないでしょう?」
「法律で決められていますので仕方ありません。」
どうやら、この役人と話す限り解決の方法はなさそうだった。
妻は、好きにすればよいと言ってくれたが、タイムマシンに乗ること自体が別れを意味していた。
別の日に別の役人に何度も
「二人で使わせてくれ」
と頼んだが、
「法律で決められているので」
と受け付けてはもらえなかった。
聞くところによれば、かなりの賄賂をつかませれば、こっそり二人乗せてくれるらしいのだが。
私の体力もそろそろ限界で、あと一週間のうちにタイムマシンに乗らなければ未来に行ったとしても
治療の見込みがないと医者に宣告された。
私はもう一度、窓口に行った。
「二人で乗せてくれ。どう考えたって一人で生延びても仕方がない。
貴方だって、必要なパートナーと別れるのと死を選択しろと言われたら選択できないでしょう。」
「時間設定を二・三〇年にしてみてはどうなのですか?
それなら、奥さんもまだ生きていらっしゃるのではありませんか?」
「しかし、医者が言うには最低一〇〇年先ぐらいにしないと見込みがないんだ。
だから、何とか・・・・」
私は、小切手を役人に見せた。
「そういうことは受け付けておりません。」
「そこを何とか・・・・」
「いっそのこと、乗るのを止めたらどうですか?
これは個人的な見解ですが、もともとタイムマシンなんか無かったわけだから。
無いと思えば、悩むことも困ることもないのでは?」
「それは、論点のすり替えでしょう。」
・・・・・・
結局、駄目だった。
家に帰り、私は女房と話した。
そして私が取った決断をここで話したいのだが、
如何せん「法律で未来のことは喋ってはいけない。」ことになっているのだ。
「無いと思えば、悩まずに・・・・・

少々嫌味なオチとなっているが、
小説の構造自体は結構気に入っています。
話しは変わりますが、いくら楽天でも、さすがに「タイムマシン」は売っていないでしょう?

PCで「タイムマシン」を検索


PCで「楽天トラベル」へ

モバイルで「楽天トラベル」へ
前回のたまねぎのねぎを食べた感想。
美味しかったです。

ねぎとたまねぎの違い

寒い冬、12月におじいさんに植えられたねぎは、4月の始め、一本、おじいさんに抜かれました。
と、言うのももう玉が出来なければならないのに、一本だけ、なぜか玉が出来なかったのです。
他のたまねぎは、たまねぎらしく玉を作りつつありました。
抜かれたたまねぎは、一見するとねぎのようでした。
しかし、根っ子の直ぐ上に、ちょっとだけ丸みが出来かけていました。
おじいさんは少し後悔しました。
5月まで待ってみても良かったのではないか?と悔やみました。
しかし、根が切れているので、もう畑に戻すことは出来ません。
これまでこんなことが無かったので、この出来損ないのたまねぎが食べられるのか
おじいさんは、隣のおじいさんに聞きに行きました。
「食べられると思うが、俺もわからん。隣のじいさんに聞いてみよう。」
と隣のおじいさんが言いました。
隣に行くとそこでも
「うーん。こんな事は初めてだ。食べられるかどうか?」
そういうことが続き、とうとう村中のおじいさんが集まり議論となりました。
「ジャガイモも、出来損ないは毒になると言うから止めたほうがいいのではないか?」
一人のおじいさんが言いました。
「じゃがいもはジャガイモ。たまねぎはたまねぎだ。」
「誰も知らんというのはおかしくないか?」
「これまで経験したことのない、未知との遭遇は、歳をとっても、あるにはあるということさ。」
「で、どうするの?」
などと議論の末、おじいさん達はそのたまねぎを見つめ、黙ってしまいました。
しばらくの沈黙の後、
「食べてみるか・・・・」
と、抜いたおじいさんが言いました。
「危ないぞ!」
他のおじいさんが言いました。
「何でも最初はある。」
と、抜いたおじいさんはその言葉を制し、自分の家の台所へ皆を引き連れて行きました。
「ばあさん、包丁を貸してくれ。」
「珍しいですね。何か?」
「うん。この出来損ないのたまねぎが食べられるかどうか食べてみようと思って。」
「あら、そんなことなら、もう今朝納豆と一緒に食べてますよ。」
と、お婆さんは言いました。
おじいさん達は一様に驚きました。
「だ、大丈夫なのか!」
抜いたおじいさんが、お婆さんに迫りました。
「大丈夫ですよ。でなかったら、毎年毎朝死んでますよ。」
「と言うことは、今までずっと食べてきたと言うことか?」
「ええ。朝にちょっと緑が欲しくて採ってますけど。」
「おおお・・・!」
集まっていたおじいさん達は一堂に瞠目し、おばあさんに注目しました。
「で、・・・・・どうして食べられると分かった?」
おじいさんは聴きました。
「食べられないんですか?食べられないなんて思ったこともないですけど?」
おばあさんはおじいさん達に不思議そうに聴きました。
「なんだか、ねぎとたまねぎって、おれたちと、ばあさんみたいに、微妙に違うんだな・・・・」
と、おじいさんの中の誰かが言いました。

実際、我が家の家庭菜園での出来事を題材に書いてみました。
で、これからたまねぎのねぎを食べてみます。
ラーメンの具として・・・・・
だ・・・大丈夫か!?

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