「船長!また、一人眠っています!」
ブリッジの船員は船長の方へ、救いを求めて叫んだ。
「船長!」
宇宙船の船長は黙ったままだった。
『これまでだって幾度の困難をかいくぐってきたのだ。これにもきっと解決策があるはずだ。』
船長はそう考えた。
しかし、船員は原因不明の眠り病にかかって、揺すっても殴っても目覚めなかった。
ロボット船医に原因を調査させたが
「不明」
と言うことしか分からなかった。
ロボット船医は、データベースにある病気ならば瞬時に見分けて治療を開始できるのだが、
如何せん、未知の病気には対応できなかった。
船長は怒鳴った。
「おい!お前らも何が原因か考えろ!途中、立ち寄った所で変な事はなかったか!」
ブリッジの船員は、誰も答えなかった。
代わりに
「船長!乗組員のほとんどが眠りにつき、起きているのは我々ブリッジにいる者だけです。」
と航海士が言った。
「分かった、仕方がない、一旦船を停止しろ。」
「アイアイサー」
船は静かに停止した。
船が止まった事を確かめた船長は続けて言った。
「起きているのはブリッジの11名だけか。これでは船が機能しない。
船医、眠っている者は、いつまで眠り続けるのか?」
「一番長いもので、今3日目です。調査した所、体温は下がり、まるで熊が冬眠しているように脈も遅くなっています。」
「と言うことは、このまま2・3ヵ月眠り続ける可能性があるということか?」
「そう予想されます。また目覚めない可能性があり、その場合は衰弱死してしまいます。」
船長は腕組みをしたまま考え込んだ。
ブリッジの皆は、船長を見て黙り込んだ。
船長は考えた。
『ここにいる者は眠った者がいない。ここは他の船室と違い、空気は全て隔離されている。だからここだけは無事と言うことになる。
しかし、眠りから覚まさないと我々は宇宙の幽霊船になってしまう。この状態では何処にも寄航させてはくれまい。
厄介者は敬遠されるからな。
結局、原因が分かって対応できない限り、生延びられないというわけだ。
しかし肝心の、船医は役立たずか・・・・。さて、どうする?
最悪、ブリッジを切り離して我々だけで脱出し、他の船員は見殺しにするか?
まあ待て。
空気感染すると言うことは、何らかの原因物質があると言うことになる。
そしてそれを取り除けば問題は解決する可能性がある?
また、その原因物質は、間違いなく脳にあるのではなかろうか?』
船長は早速ロボット船医に患者の脳を調査する様に指示した。
ロボット船医は指示通り、調査を開始した。
しばらく経って、ロボット船医から得意げに報告が入った。
「船長。分かりました。原因は寄生虫でした。また、虫下しを点滴すると駆除できることも確認できました。」
「良し、早急に虫下しを点滴して治療に当たれ。また、空気を浄化する様に。」
ブリッジに安堵のため息が漏れた。
船長もふーと息を吐いた。
『俺が、皆を見殺しにして、逃げる事を考えていたと知ったらどう思われるかな。言わぬが花か・・・』
と船長は思った。
了
眠りといえば「枕」
私も枕ジプシーで、使っていない枕が五個ほどあります。
今使ってる枕も、あまり・・・・
ところで、楽天で検索してみると・・・・・
レビューが結構ありますね。
うーん、そんなに高くないし、どうしましょうか?
「船長!」
【76%OFF】イタリア製アンナブルーオルトペディコスリープメディカル枕【2008年間ランキング入…
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月: 2009年6月
紙と少年
少年は52点と書かれたテストをびりびりに破って、川へ捨てた。
テストを捨てたのは2回目だった。
「そのこと」を発見したのは、朝の漢字テストの時だった。
前日、少年はきちんと漢字の練習をし、そのテストに臨んだ。
なので満点を取る事は出来た。
しかし、0点だった。
なぜ0点だったのか?
少年は、漢字を全て書くことは出来た。
しかし、数日立てば漢字の何割かを忘れてしまう。何か変だ。
では、紙とは何なのか?
いつか受験で、紙に答案を書いてそれを誰かが採点し、自分の人生が左右される。
と言うことは、紙というのは自分の人生を左右するものなのか?
テストは出来の悪い時だってある。
それなのに、なぜ?
人生を紙に左右されなければならないのか?
そうか、人間の文明は紙から生まれたのだ。
紙が無いと、英知は次の世代へ受け継がれない。
紙があるからこそ、知恵を蓄える事ができ、次の世代が飛躍できるのだ。
と、考えた少年は、急に、紙というのもが自分に重たくのしかかってくるのを感じた。
それは少年の息を止めそうにまでなった。
そして、少年は紙と徹底的に戦うことを決めた。
最近DVDで見た、ターミネータのコナーだって機械と戦った。
本当に戦う相手は、機械ではなく「紙」なのに、と少年は考えた。
そうして少年は52点のテストを破って捨てたのだった。
本当は80点ぐらいは取れたが、文字を紙に書くことを極力避けるために52点となった。
0点を取れば誰かにこの戦いがばれてしまうので、そこそこの点は取る必要があった。
なので、記号問題は許される範囲ではあった。
その様な孤独な戦いを続ける少年は、ある時、自分の部屋の本が、紙でできていることに気づき愕然とした。
お金だって紙でできていた。
それでも紙と戦おうと思い、少年は地道に自分のルールでその戦いを続けた。
が、ある朝、トイレットペーパを使った時に少年は敗北を認めた。
それも紙でできていたのだった。
それからしばらくたって、少年はこんなことがあったことすら忘れた。
しかし、少年の奥底には、小さいが、固い石のようなものができていた。
了
少年とまではいかないでも
観念に囚われることは誰にでも起こりえます。
そしてとても厄介なやつです。
観念って。
コンプレックスの正体って観念かも?
金箔の本場金沢でも希少な幻のあぶらとり紙■ふるや紙■金箔製造元の本ふるや!!
残雪
3月の半ばも過ぎた頃、富山へ出張へ行くことになった。
大阪からは、特急が出ているが、車で行って寄り道でもして、のんびりしたいと思った。
それに、昔の友達の顔も見てみたい。
車のナビゲーションに従って高速を降り、信号で右に曲がった。
目的の会社までは相当ある。
結構山の方へ走って行くことになった。
北陸特有の散居村の中の道だ。
道の横の用水路には、たくさんの綺麗な水が光を乱反射しながら流れていた。
富山の平野はそのまま海へと流れ込む、微妙な傾斜を持っている。
大きな視点に立てば、立山のすそ野、イコール、富山の平野と言っても良いのかもしれない。
続く田んぼの中にはぽつんぽつんと、それぞれ独立した林がある。
その林の中に家がある。これが散居村というものらしい。
よく晴れた日で、空は、東に見える立山の稜線に切り取られているだけで、後は日本海との接点まで続いている。
車のナビは、真っ直ぐ上を指したままで、黙ったままだ。
やがて、緩やかな上り坂になり、だんだんと道が曲がってきた。
立山までは行かないけれども、そのふもとに目的の会社がある。
車は、林の中のつづら折の道を上り始めた。
木々の間には、未だ数十センチの残雪があり、一面を覆っている。
が、木々の根元の周りだけ雪が解ける、いわゆる「根開け」があった。
残雪の上には、雪の重みで折れたのか、枯れ枝等が落ち、真っ白ではない。
道の両脇はガードレールは見えず、それに代わる様に、こちらは真っ白な雪が残っていた。
三脚を出し、この光景をカメラに留めようとしている人がちらほらといる。
確かに、このような光景はそう見られたものではない。
ふと、ナビに目をやると、目的地まで10分と出ていた。
約束の時間には、早すぎるようだった。
私は車を脇に停め、エンジンを切って、しばしこの林の残雪の、根明けの光景を見ることにした。
車から外に出ると、雪が音を吸収しているのか、途端、静かになった。
どうして根元の周りだけ雪が融け始めるのが早いのか?
一説によれば、冬の間、木々は凍っているらしい。
そして、背の高く太陽の光を最初に受ける木がまず融け始める。
脈を打ち始めた木は地中の水分を吸い上げ、徐々に温度を上げていく。
その温度の輻射熱で根元の雪が融けるらしい。
理屈はそうかもしれないが、私はこの光景から目が離せなかった。
バキッという音に首を向けると、
朽ちた枝が折れたらしく、落下途中に他の枝にぶつかり、はねて、鈍い音を響かせていた。
そして、最後には雪の上にサクッと落ちた。
未だ芽吹きは遠く、儀式がゆっくりと進められているようだった。
私の中ではザワザワと、何かがざわめき始めていた。
了
淡々と書く方法は評判がよろしくないようですが、
これはまあまあ、出来はいいのでは?
うーん・・・
こんなお茶発見!今まで知りませんでした。
にこ市セール開催!1個タダで貰える!?〓【雪茶】〓(3個セット)private brandogalandにこ市…
危険
街角の掲示板に、「危険だ!注意しろ!」と貼り続ける人がいた。
誰も、その人が貼っている所を見たことはない。
けれども、字体、雰囲気などから、たぶんこの人に違いない、と街の人々は噂した。
その人は、年金暮らしで、毎日、庭の草むしりが終われば、散歩に行き、
散歩が終われば昼寝、昼寝が終われば近所の図書館に新聞を読みに行く生活を送っていた。
その日、図書館からの帰り道、その人は街角の掲示板の前に足を止めた。
その人は右を見、左を見、辺りに人影がないことを確かめた。
すると、ゆっくりと手提げ袋の中から、「危険だ!注意しろ!」と書かれたA4のコピー用紙をとりだして、セロテープで掲示板に貼り付けた。
その人は、貼り付けると直ぐにその場をゆっくりと、ただ通り過ぎるように離れて行った。
自宅に帰るのかと思ったが、その人は途中の公園の空いたブランコに腰を掛け、ポケットの中からゴールデンバットを一本取り出し、ライターで火をつけた。
空を見上げるでもなく、ゆらゆら揺れるブランコの上でふーと大きな煙をはき、その人の目は見えない何かを凝視していた。
一本のタバコは直ぐに吸い終わり、その人は吸殻を携帯灰皿へしまいこんだ。
重たい腰を上げ、その人は自宅へ向けて歩き出した。
そんな生活が随分続いているが、その人に何が危険なのか、何に注意すればいいのか、誰も聞いた人はいなかった。
そして、その人も、それ以上何も、語ろうとはしなかった。
「危険だ!注意しろ!」
意外は。
了
やんごとなき事情で、一日遅れの公開。
サラリーマンに
一週間に一本はなかなかもって、きついですね。
今回は、雰囲気を書いて見た。
なんとも言えない空気を感じていただければ、とりあえず成功か?
セロテープで貼る所は、結構気に入っています。
風にそよぐ草花...ヒーリング...ありがとう!の気持ちを込めてガラセロテープ ハーブフ…