神様のお酒

今は昔。
お爺さんが濁酒(どぶろく)を仕込んでいる最中、重たいカメを持ち上げた時ぎっくり腰になった。
婆さんは畑に行っており、お爺さんはカメを下ろすに下ろせず困りはて、額からは脂汗が流れ出していた。
そんな時、お爺さんがふと神棚を見上げて再び目の前を見ると、白い着物を着た子供、未だ五・六歳の男の子が立っていた。
「坊主、誰か呼んで来てくれ。」
「そのカメを下ろしたいのか?」
「たいのだが、お前さんじゃ無理だ。誰か呼んで来てくれ。」
近所の子供にしては見覚えの無い顔の子供だった。
「貸してみろ。」
子供はそう言うと、軽々と爺さんが一抱えにしていた濁酒のかめを両手で持ち、
「どこにおくのだ?」
と聴いてきた。
「水がめの隣に置いてくれ。」
やっと腰を下ろせたお爺さんは、その場にへたり込んだ。
「これでいいのか?」
「有難う。ところで坊主、ドコノ子だ?」
「おいらは神棚の神様だ。お前さんが助けてくれと言うから出てきてやったのだ。」
小さい神様はそういうと、布団を敷き、爺さんをひょいと持ち上げ軽々と運んで寝かせた。
「さて、次は何をしようか?」
「濁酒の仕込みも終わったことだし、婆さんが帰ってくるまで遊んでおいてくれ。」
そう言われると、小さい神様は外に飛び出し、遊びに行った。
晩飯時になると、小さい神様はきちんと帰ってきて、お婆さんの作ったご飯をたくさん食べて直ぐにすやすやと眠ってしまった。
それから、お爺さんとお婆さんは、神様を大変かわいがって育てた。
小さい神様はぐんぐんと大きくなり、一年も経つ頃には立派な青年になっていた。
青年になった神様は畑仕事もこなし、村の仕事もテキパキとした。
そして、やること成す事全てにおいて、間違いが無く、完璧にこなした。
やがて村人達の噂は広まり、近隣の村人達も青年の神様の元に集まり万事相談するようになった。
そんな月日が流れたある日、青年の神様はお爺さんとお婆さんに
「そろそろ私は結婚相手を探しに旅に出なければなりません。
神棚の神様は、ちゃんと次を手配しておきましたので心配は要りません。
長い間有難うございました。」
と打ち明けた。
お爺さんとお婆さんは大変悲しんだが、神様の都合も都合なので、
「いい相手が見つかるように。そして、いつかまた縁があれば。」
と青年になった神様に言った。
神様は、酒が大好きなお爺さんとお婆さんに
「これは私の国の、お酒の素です。次に濁酒を仕込む時に是非お試しください。」
と一袋のお酒の素を渡した。
そして青年の神様は、村人達に惜しまれながら旅立って行った。
あくる年、お爺さんは神様に貰った酒の素で酒を造ってみた。
出来上がってみると、なんとも言えない美味しいお酒が出来上がった。
自分一人で飲んでは勿体無いので、お爺さんとお婆さんは村人達にも分けて、皆で飲んだ。
それからその村は酒どころとなり、酒を飲んだ村人は、決まって長生きをしたそうな。

湯豆腐の季節となりました。
美味しい日本酒と、はふはふの湯豆腐を食べたいですね。
京都のある湯豆腐屋さんの仲居さんに教えてもらった
自宅での湯豆腐の美味しい作り方は、
豆腐は湯だって一分程度でちょうどだったような記憶です。
ぐつぐつやらないで、出来上がったら火から下ろして、又は火は小さくして食べましょう。
日本酒は純米。
アー極楽極楽。

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