草刈

高速で回る丸い刃が、草をブンブンと切っていく。
地区の草刈と言うわけだ。
いいのか悪いのか晴天。1・2時間程度の肉体労働。
取りあえずここからあそこまで刈ってしまえば、自分の分担範囲は終わりだ。
と思っていたら、大きな石でもあったのか、チッン!という音がして、刈払機が跳ねた。
気になって足で草をどけて見てみると、錆が浮いた甲冑の兜だった。
後ろの誰かに言おうと思って振り返ると、一面緑の丘で誰もいない。
さっき刈ったはずの草は、私の膝下程度まであった。
息をすると、草の濃い匂いが鼻をこじ開けた。
私は刈払機のエンジンを止めて、360度ぐるりと見た。
静かな風の音が耳に入るだけだった。
山の稜線には見覚えがあった。
誰もいない。
私は麦藁帽子の下から青い空を見上げた。
いつかどこかで見たような、デジャヴ。
上を見たためか、頭の血液が潮が引くように薄れていく。
体の力が入らず視界が薄れていった。
目を開けると、看護婦の後姿が見えた。
戻ってこれたと言うわけか。
私は深く息を吸い込んだ。
クレゾール消毒液の匂いが鼻腔に染みた。
「大丈夫ですか?」
と、私を覗き込んで言った医者の頭が丁髷(チョンマゲ)だった。

草刈の時いつも空想してしまう事をどうしても書いてみたい。
と言うわけで、これは空想。
どんな意味があるのか?
どうして空想してしまうのか?
そろそろ京都が懐かしくなってきた

ウェスティン都ホテル京都