飛行機は空を飛ぶ

秋の昼下がりに散歩をしていると、青い空に小さく飛行機が見える。
赤と白のその機体は僕の知らないところへ飛んでいく途中。
高脂血しょうと診断されたので、休みは散歩が習慣になった。おかげでここ数年年輪のように積み重なった脂肪が少しずつそげている。
 一体どこに飛んでいくのか?しばらくぼんやりと見続ける。秋の日差しがウィンドブレーカの背中を暑くする。
 突然僕の体が空に舞い、気づくと先ほどの飛行機の中にいた。
「お客様・・・・・。」
清潔なシャツを着たキャビンアテンダントが僕に絶句する。
「これはどこに行くんですか?」
「台湾に向かって飛んでいます。」
「台湾か。行った事がないので行ってみたいけれど、明日は仕事に行かなきゃいけないし、どうしたらいいでしょうか。」
アテンダントは、何も答えなかった。こんなことは初めてだろうし、信じられないといった事が彼女の心中だろう。結局僕は、宇宙人よろしくキャビンアテンダントの前に突然現れたのだった。ビックリするのは当然の権利だ。
「さて、どうしましょうか・・・・・。」
アテンダントがそういうので僕は困ってしまった。
「とりあえず、このまま台湾に行くしかないと思います。そこで強制送還というのが順当じゃないでしょうか?。」
言ってみると、それが当然のように思ったのかアテンダントは頷いて、納得したのか僕の席を用意してくれた。それから、他の乗務員に知らせてくるといって歩いていった。
 僕はビジネスクラスの2人がけの席に一人で座った。
 機内は僕が居る事意外は何も変わったことはないようだった。
 座席の航路モニターを見ていると福岡の上空を飛んでいるようだった。もう少しで日本領空をでるようだ。
「でも困ったな・・・・」
そうつぶやいていた。機内のよく効いた暖房のせいで眠くなってきた。そして僕はワインを飲んで酔ったように眠ってしまった。
 
 目が覚めた。
僕は手で安物のこたつ敷きを確かめ、自分の家のコタツの中に居る事にほっとした。その時すぐ上で、飛行機の車輪が出る音が聞こえた。
 急いで外に出てみると、山の向こうの空港へ車輪を出した飛行機が消えていった。
 少々寝汗をかいたようだった。  
                                             了

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