ゴールデンウィークの秘密

始業式で中学二年生になったばかりのショウタがトイレに入ると、タバコの匂いがした。
トイレ奥の個室の前には、見張り役らしき少年(多分新一年生)が一人いて、個室の上からはタバコの煙が流れ出ていた。
それでもショウタは用を済ませ、手を洗ってトイレを出ようとした時、後ろから
「ショウタじゃねえ?」
と声がした。
振り返ってみると、どこかで見たような顔だった。
「俺だよ。ほら小学校の5年で転校した・・・・・」
「ミノル?」
「だろ!」
「えー。帰ってきたの?」
ショウタは驚きと嬉しさで、トイレ奥の不良グループの方へ行った。
一年生の見張り役の少年が、改めて先輩のショウタに挨拶をした。
ショウタは軽く受けて答えたが、鼻をくすぐられるような違和感を感じた。
「一服しない?」
ミノルがタバコを差し出した。
ショウタはタバコを吸ったことはなかったが、興味はあった。それに断る雰囲気でもなかった。
「おれタバコは初めてなんだ。」
ショウタは一本抜き取り口にくわえながら言った。
ミノルはニコニコしながら
「火点けるから、軽く吸ってみて。」
スッと吸うと、先端が赤くなり火がついた。息を吐くと白い煙が出た。別段不味くも美味くもない。
咳き込みもしなかった。
ただ見つかるとやばい、と、心配があった。しかし、幼馴染との再会は喜ばしいことだった。
ショウタは一本吸う間、あれこれミノルと話した。
ショウタがその日見たミノルは、小学校のミノルではなく、ショウタより少しばかり多くのことを経験し、また見ることによって何処となくすれて、
今までとは違う生活を、どう違うのかは言えないけれど違う生活をしている様にみえた。
というわけで、吸い終わると
「また。」
と言うことでショウタはそこから、あっさりと立ち去った。
会話も昔の様にとはいかなかった。
それから1ヵ月ぐらい過ぎ、ゴールデンウィークの最中、ショウタは近所のスーパーでレジに並んでいるミノルを見かけた。
声をかけようとした時、ミノルが棚に並んでいる105円ライターをズボンのポケットに入れた。
ショウタは直ぐに目を背け、そ知らぬ顔でいつもの買い物をした。
そして普通にレジを済ませて家に帰り、冷蔵庫にペプシネックスを入れた。
ついでに冷凍庫からアイスバーを一本取り出し、食卓に座ったまま、居間でテレビを見ている母親の後ろ姿をぼーと見ながらさっきのことを考えながら食べた。
そして、食べ終わった時、真っ当な人には言えない秘密を抱えた事に気づき、溜め息をした。
「それにしても後味の悪いタバコになったな・・・・。」
と、ショウタは小さな声で一人ごちた。

遠い昔の夏休み。
青臭い思春期ってものを想像・・・・・・
してみました。

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