ある家老

「この件に関して預かり知らない」
家老は言っては見たものの、自分の責任が無くなる事はないだろうと思い続けた
「しかしながら、立場上私の責任である。申し訳ない。」
あるものは苦虫を噛み潰したように下を向き、あるものは心の中で笑っていた。
三人の家老の席を狙っているらしいという噂を聞いていたし、それぐらいの野心があっても国のためには問題ではない。
「どうで御座ろう。一旦殿に申し上げて・・・」
別の家老が切り出し、
「よかろう・・・」
と場の雰囲気はここで裁可を出さず、殿の判断ということで家老職を解くらしい。
「では失礼する」
家老は先に立ち上がり帰ることにした。
廊下ですれ違う家臣の目は痛いが仕方がない。
いやいや、自分が思うほど他人は自分に興味はない。
おそらく謹慎となるであろう。
下手をすると切腹・・・いやそこまではなかろう。
隠居して家督を子供にという穏便なものになるのではないか。
問題は・・・いや、やめておこう。
どうにかする気は失せて、嫌気が差していた。
地位など欲しいものにくれてやる。
そう思うと心に残っていた重い空気が口から出た。
幾分心が晴れると久しぶりに旨い酒が飲みたくなった。
城からの帰路、なじみの酒屋により一升買い求めた。
自分で買い物をするのも久しぶりだ。
明日から何をするか?
とりあえず、裁可が出ると当分家から出られそうにないので釣りにでも行っておくか。
川沿いの土手には青い草が生え始めていた。

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