ブルべの夜明け

 峠を越え、真っ暗で寒いダウンヒルをやり過ごし、街の入り口の信号で止まった。
サイコンを見ると340km。
あと60kmちょっとでゴール。
赤い信号機の向こうの空が少し青くなっている。
ライトのバッテリーが心配だったが、もうすぐ夜明け。
青に変わりチェックポイントのコンビニへ滑り込む。
 ホットラテを注文する。
レシートをクリップでブルべカードに留めて、時間を記入する。5時23分。
 外に出ると先ほどより明るくなっている。夜明けか。
消された星空を見ながら飲んでいるとヘッドライトが眩しいライダーが
「おはようございます~。」
と、滑り込んできた。
ロードバイクを立て掛けて、ライトを消すと彼の目も空に向けられた。
「明けますね。」
「ええ。下り寒かったですね。」
と答えると、
「無茶苦茶・・・ハハハ」
と笑いながらがコンビニに入っていく。
山の端が赤くなってきた。
今回何個目かのブラックサンダーを一口かじる。
ホットラテを飲む。
単純に美味い。
そして夜明けが美しい。
コンビニから出てきたライダーが、
「寒いけど綺麗ですね。」
とビックサイズの熱い飲み物を飲み、パンをかじった。
「朝はパン派ですか?」
「はい。」
と彼は言った。