街角の掲示板に、「危険だ!注意しろ!」と貼り続ける人がいた。
誰も、その人が貼っている所を見たことはない。
けれども、字体、雰囲気などから、たぶんこの人に違いない、と街の人々は噂した。
その人は、年金暮らしで、毎日、庭の草むしりが終われば、散歩に行き、
散歩が終われば昼寝、昼寝が終われば近所の図書館に新聞を読みに行く生活を送っていた。
その日、図書館からの帰り道、その人は街角の掲示板の前に足を止めた。
その人は右を見、左を見、辺りに人影がないことを確かめた。
すると、ゆっくりと手提げ袋の中から、「危険だ!注意しろ!」と書かれたA4のコピー用紙をとりだして、セロテープで掲示板に貼り付けた。
その人は、貼り付けると直ぐにその場をゆっくりと、ただ通り過ぎるように離れて行った。
自宅に帰るのかと思ったが、その人は途中の公園の空いたブランコに腰を掛け、ポケットの中からゴールデンバットを一本取り出し、ライターで火をつけた。
空を見上げるでもなく、ゆらゆら揺れるブランコの上でふーと大きな煙をはき、その人の目は見えない何かを凝視していた。
一本のタバコは直ぐに吸い終わり、その人は吸殻を携帯灰皿へしまいこんだ。
重たい腰を上げ、その人は自宅へ向けて歩き出した。
そんな生活が随分続いているが、その人に何が危険なのか、何に注意すればいいのか、誰も聞いた人はいなかった。
そして、その人も、それ以上何も、語ろうとはしなかった。
「危険だ!注意しろ!」
意外は。
了
やんごとなき事情で、一日遅れの公開。
サラリーマンに
一週間に一本はなかなかもって、きついですね。
今回は、雰囲気を書いて見た。
なんとも言えない空気を感じていただければ、とりあえず成功か?
セロテープで貼る所は、結構気に入っています。
風にそよぐ草花...ヒーリング...ありがとう!の気持ちを込めてガラセロテープ ハーブフ…