年賀状の印刷作業を終え、ノートパソコンをシャットダウンする操作をすると、パソコンの画面に
「ただ今更新ファイルをダウンロード中です。電源は自動的に切れますので、電源を切らないでください。」
と出た。
「いつもの更新か・・・・」
と彼は思い、炬燵の上のみかんに手を伸ばした。
今年は150枚程度印刷したのだが、年々少なくなっていくような気がした。
みかんを口に放り込み、皮をゴミ箱に入れ、新聞を手に取り、テレビの番組表を眺めた。
年末のテレビには、彼の興味を引くような番組は無かった。
「年賀葉書でも出してくるか・・・・」
彼はそう思って炬燵から這い出し、寝巻きのジャージの上からピーコートを羽織って出かけた。
気持ちよく晴れていた。
「来年はどうなることやら・・・・」
そんな不安と心配がいくばくか癒されるような空の青さだった。
さすがに空気は冷たく、保温性のないジャージのズボンから風がすうすうと通り炬燵の余熱は冷めていった。
投函し、再び炬燵に戻り、ネットでもしようとパソコンを見るとまだダウンロード中であった。
「いやに長いな・・・・」
でもしょうがない。
彼はプリンタだけを外して片付け、パソコンはコンセントの傍の部屋の隅に移した。
再び炬燵に足を入ると、ちょうどサーモスタットが切れ、放熱版が赤くなり暖かくなった時だった。
何もする事が無いのを喜べるのは、月々の給与があるからだと思った。
座布団を枕に炬燵に首まで潜り込むと、眠たくなった。
彼は着ていたチャンチャンコを脱いで布団代わりに上にかけ、昼寝ときめた。
目を覚まし時計を見ると16時だった。
パソコンを見るとまだダウンロード中だった。あれから2時間も続いていることになる。
「切ってしまおうか?」
と思ったが、年末がパソコンの再セットアップで潰れても嫌なので、炬燵から出るのは嫌だったが2階の別のパソコンでネットをすることにした。
こちらでは別になんら問題はなく、更新も無いようだった。
気になってITニュースを見てみると新手のウィルスが流行っているらしい。
「感染するとパソコンをシャットダウンする画面が表示されたままになり、
それが8時間経過した時点で=ダウンロード・オールナイト=と表示されてようやくシャットダウンされる。
その後パソコンを立ち上げた時点でこのウィルスは自己消滅し、レジストリに感染記録を残すので二度と感染しない。」
というものらしい。
と言うことは、1階のパソコンが感染した疑いがあると言うことか。
彼は何か駆除できる対処法はないかとブラウザの検索ボックスにカーソルを移したがしかし、突然の大きな虚脱感が彼の手を止めた。
「別にどうでもいいではないか・・・あと6時間経てば消え去るのだから・・・・」
彼はそう思い、初詣に行く予定の、街の神社の名前を入力していた。
了
ダウンロード・オールナイトという語呂にひかれて
かいてみたもの。
当初予定していた明るい笑い話とは全く違う方へ行ってしまった。
まあ、明るく 明るく行きましょう。
と言うわけで、
キングレコード 私と小鳥と鈴と~金子みすずベスト~