赤い鳥の糞が銀色の車のトランクの上に落ちていた。
この時期の餌が赤い木の実のせいだ。久しぶりに霜が降りて寒い。
匂いはない。鳥の糞は動物の糞のように強烈に四方に漂う悪臭を放たない。
鶯のものは美顔剤に使われたほどだから確かだろう。
フロントガラスに湯をかけて氷を溶かす。
残りの湯でふんを取ろうとしたけれど乾燥してへばりついたそれはちっとも流れない。
取れてないけれどもう行かなきゃいけない。「今とる事はない。」
調子の上がらないエンジンを歯を食いしばって吹かして100メートル。
白いテープの65400KMが目に入った。
そういえばオイルを換える時期だ。ディーラーへ明日の朝行こうか。いつにしようか。もうちょっといいいかな。そんなことを考えて走っていると2番目の信号交差点が事故現場になっていた。寒いのに車の前に立つストレスに満ちた運転手の姿があった。大変だ。
そうして少しアクセルは戻された。こんな事がいつかあったかなと思いながら。