「しかし、私が水棲人に対する裏切り者なら、君達は地上の人間に対する、裏切り者じゃないか!」という、ある時代からある時代への移行に生ずる価値観の消滅と誕生に、果たして人間はどう対処してゆくのか、できるのかが問われている。
ユダヤ的なるものには、やはり他の表現だけでは置き換えてしまえない、ある独特なニュアンスがあるようだ。と安部が「内なる辺境」で述べる時、単なる二元論だけで安部文学・文学をとらえることの危険性を感じなければならない。
ある個人の属する集団のメンバーが全員一致して、当の個人を精神分裂病者にしようと思えば、理論的にそれは可能であろう。
「現代社会の中で合理と不合理、理解し得るものと測り知れぬものとのどっちつかずなところを護り続ける」ことを強調する。と山口昌男が「文化の詩学T」でロラン・バルトの文章を紹介している、それである。