愛されなさい 島村洋子

愛されなさい

愛されなさい

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竜馬がゆく  司馬遼太郎

竜馬がゆく(1)新装版

竜馬がゆく(8)新装版

作者:司馬遼太郎
今年はNHK大河ドラマの影響で竜馬ブームですね。「天地人」は見なかった私も(見ている夫の横で本を読んでました)「龍馬伝」は見ている。
福山雅治って20年間ずーっとカッコいいよなあ…と関心しつつ。
(「JIN」というドラマで竜馬を演じていた内野聖陽も巧い役者だった)
さて、『竜馬がゆく』は過去に読んだ本。今回のドラマの影響で読み返してみようと思い、本棚を探してみたらあった。もしかして捨てたかな?と思ってたけど…
歴史オンチの私が、唯一最後まで読み通すことができた歴史小説です。
司馬作品らしく、説明的なところが多いので、その辺は眠ーくなってしまうんだけれど、竜馬の人間性をあらわすエピソードは面白く、頭に残っている。
羽織の紐をかみ、それを振り回すのが癖で周囲に唾が飛ぶ…とか。それでも女性にモテるとか。
それまでの日本人がやろうとしなかったこと、思いつきもしなかったことを実現しようとした竜馬。型にはまらぬ発想はどういう環境から生まれてくるのか、それとも生まれ持ったものなのか…
魅力的な人物ゆえに、とても面白い小説になっています。
さて、都合により、今日でブログをしばらくお休みします。再開の時期は未定。今まで読んでくださってありがとうございます。
また逢う日まで。

八十日間世界一周  ヴェルヌ

八十日間世界一周(上)
八十日間世界一周(下)

作者:ジュール・ヴェルヌ
フランスの小説家、ジュール・ヴェルヌの愉快な小説。「空想科学小説の父」と言われているらしい。
舞台は1872年のロンドン。謎の金持ちの紳士フォッグ氏はある日、サロンで「八十日間で世界を一周する」と宣言し、できなかったら財産の半分を差し出すという。
あとの残りの財産は世界一周のため。できなかったら一文無しになる運命。フランス人の召使のパスパルトゥーをつれて、出航する。
スエズを越えてインドへ。おっと、その過程で、フォッグ氏はフィックス刑事という男に銀行強盗の疑いをかけられて、ひそかに追跡もされている。
インドでは殉死の習慣のために殺されかけていた美しい未亡人を助け、香港、横浜、そしてアメリカへ…
さまざなま困難に遭いながら、フォッグ氏自分の目的を果たすべく行動する。
ハラハラしたけれども…まあよかった。
フォッグ氏のキャラクターがとてもよい。何があっても冷静沈着、紳士的な態度を崩さず、必要以上に喜んだり怒ったりしない。ホントに立派な人ってこうなのよね、と思ってしまう。
長い小説だったけれど、字も大きく、翻訳も読みやすかった。
どこにも行かないお正月。心だけは世界一周…できなかな?

ケインとアベル  ジェフリー・アーチャー

ケインとアベル(上)
ケインとアベル(下)

作者:ジェフリー・アーチャー
「読む本がない…」ので夫の本棚を物色。彼が大学時代に読んで面白かったというこの本を読んでみた。楽天市場を見ると、当時から文庫本の値段がそれぞれ300円ぐらい高くなっている!デフレ時代とはいえ、本だけは安くならないですね。
1906年、ポーランドの片田舎で私生児として生まれたヴワデク。極貧の猟師に引き取られ、それから男爵家の子どもの遊び相手として住み込みで生活し、ドイツの侵攻により祖国も肉親も失ってしまう。
一方、ボストンの名門ケイン家に生まれたウィリアム。恵まれた環境、才能でエリート人生を歩み始める。
ヴワデクは大変な困難の中生き抜いてアメリカにたどり着き、アベルと改名してホテルで働くようになる。そして弛まぬ努力、勉強を続けて全米に広がるホテルチェーンを作りあげる。
出世コースを歩むケインは大銀行の頭取という地位をつかむ。
ケインとアベル、二人は皮肉な形で出会い、互いを憎むようになってしまう。
移民からのし上がったアベル、生まれつき恵まれたケイン…ふたりの人生が交互に語られ、ついには交差する。
ケインの息子、アベルの娘が恋に落ち、もちろん両方の父親は激怒。子どもを勘当するが、後悔の日々…そして最後には…
ものすごく早く激しいストーリー展開で、全く飽きることなく読めた。特にアベル。やっぱり「のしあがってやる!」というエネルギーを持った人を応援したくなってしまう。
アメリカの経済史?としても読める部分もあり、ビジネスマンのやる気カンフル剤として読める趣も。
収容所生活、企業・銀行の内幕、復讐、戦争、若き男女の愛といったテーマがてんこ盛りの面白い小説です。わくわくしたい人は是非。

レ・ミゼラブル  ヴィクトル・ユゴー  辻昶 訳

レ・ミゼラブル(1)
レ・ミゼラブル(2)
レ・ミゼラブル(3)
レ・ミゼラブル(4)
レ・ミゼラブル(5)

作者:ヴィクトル・ユゴー  辻昶 訳
あらすじはよく知られている『レ・ミゼラブル』。子供向けの本とか、数年前のお正月に教育テレビで放送したもので知っていたけれど、完訳を読んだのは初めて。
いつかは全部読みたいと思っていた。今はかなりヒマなので、読むことができてよかった。
潮ライブラリーから今年出版された完訳。
もちろん、かなり長い。しかしあり得ないほどドラマチックな内容。
一人の元徒刑囚、ジャン・バルジャンの波乱の人生を描いている。一個のパンを盗んで19年の間刑務所に入り、やっと出てきたジャン・バルジャンは、教会に一泊し、そこで銀の食器を盗む。
すぐにとっ捕まえられて教会に警察とともに戻ってくるジャン。そこで教会の司祭は「あなたには食器だけではなく、この燭台も差し上げようと思っていたのに…」と燭台を渡される。
そこで彼の人生は変わる…とここまでは誰でも知ってますよね。
心を入れ替えて市長になるんだけれども、彼の過去を知る刑事ジャベールがどこまでもどこまでもジャンを追ってくる。(まるで堀ちえみの大映ドラマに出ていたしつこい刑事みたいだ)
あるいきさつで引き取ることになった少女コゼット。コゼットに恋するマリウスという青年。
悪の権化のような男、ティナルディエ。
登場人物の運命がいったいどうなっていくのか、ハラハラドキドキの展開。
途中でさしはさまれる歴史の描写とか、作者の思索の章とかはかなり退屈で、正直斜め読みしてしまったけれど…
ジャン・バルジャンは悪人でも善人でもない。しかし司祭に助けてもらったあと、彼は自分の基準で自分の行動を決め、生き抜いた。人は、変われる。ただし、人との真剣なかかわりによってに限り。
昨日紹介した『死刑でいいです』の犯人も、善き人との出会いがあれば人生は変わっていたのかしら…
題名の「レ・ミゼラブル」というのは「恵まれない人々」という意味。なのできっと悲しい結末だろうと悲観していたが、読んだ後は救われた気持ちになった。
宗教的なもの、自分の信念、人への愛情、これが人の心をどれだけ支え、強くすることか…三浦綾子の『氷点』を読んだ後のあとのような、とても真面目な気持ちになった。
一生のうちに一度は読んでおきたい名作です。ヒマな人は是非。

オイアウエ漂流記 荻原浩

オイアウエ漂流記

作者:荻原浩
南国リゾート地へ取引先の副社長を案内するリゾート会社の社員たち。主人公の賢司、主任、課長、部長、取引先の副社長、それに孫を連れた老人、新婚カップル、謎のアメリカ人、犬、10人と一匹が小型飛行機に乗り、海に墜落する。
機長は残念ながら亡くなってしまったが、10人が行き着いたのは無人島。
会社の秩序が無人島にも持ち越されるが、もちろん叙徐々に関係なくなっていく。
しっくりきてない新婚カップル。理系でオタクっぽいダンナはなぜか釣りが得意。
老人は戦争体験をひきずり、少々認知症ぎみ。
無人島に行き着いた人々のヒューマンドラマというありきたりな設定で、内容にも新しさは感じられなかった。比較的、牧歌的。殺し合いも、女性の凌辱もなし。
無人島ではやはり食べ物のことが一番大事。南国の島だったので一応食事はできる。ココナツ、魚、最後にはウミガメやコウモリまで食べる。本当においしいのかしら?
桐野夏生『東京島』とかゴールディング『蝿の王』みたいな、人間の本質が剥き出しになるといった深さはなかった。
気楽に楽しめるエンターテイメント。作家にとって「無人島もの」は書きやすいのかな。
また、『明日の記憶』みたいに映画化を狙っているのかしら?

1Q84   村上春樹

1Q84 book 1(4月ー6月)
1Q84 book 2(7月ー9月)


作者:村上春樹
やっと読むことができた話題の本。私もプチハルキスト。村上春樹の小説は全部読んでいる。(『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』だけは訳あって未読)
今回も夢中で読んでしまった。面白かったー。
読み初めは、三人称で書かれていて文体もいつもとちょっと違うかな、と感じた。青豆というトレーナーの女性(実は必殺仕事人)、天吾という小説家志望の予備校講師の二人に起こる奇妙な出来事が交互に描かれる。
いつ、二人に接点ができてくるんだろう・・・と読み進めると、カルト教団、性暴力などがからんでくる。
読んでいくうちにデジャリュ(既読感)が・・・
少年少女の頃の思いを引きずるところは『国境の南、太陽の西』を思わせ、性を楽しむために人妻のガールフレンドを持つところ、力のあるパトロンの存在は『スプートニクの恋人』を思い出させ、何かわからない「悪」に立ち向かい愛する者を見つけ出そうとするところは『ねじまき鳥』を彷彿とさせる。
性交渉が女性主導で、ひどく「意味」を持ちそうなところは『ノルウェイの森』にも似ているような。
ただ、今回の作品では、もっと人間の歴史を長いスパンで捉えて「原罪」に近づこうとしているというような感じも受けた。難しいことはわからないけれど・・・
あと、ヒロインのキャラクターが魅力的。珍しくハードボイルドなヒロイン。
もちろん、ストーリーの面白さはハルキストを裏切らない。
しかし、読み終わって実にもどかしい。これでまさか終わりじゃないだろうと思う。
ウワサによるとbook3が刊行されるとか。ちょっと楽しみだ。

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 白石一文

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(下)

作者:白石一文
なんか小説らしくない、不思議な小説なんだけれど、面白くて一気に読んでしまった。
啓蒙小説、とでも言ったらいいんだろうか、無知な私には大変勉強になりました、という感想も。
主人公は、某大手出版社の週刊誌の編集長。彼は仕事上、政治、経済、芸能界にからみ、自分の立場を利用して若い女性との情事(というか肉体関係)を楽しんでいるちょっとイヤな男として登場する。
彼は胃がんを患った経験があり、抗がん剤を飲んで病気を抑えている。
小説のストーリーは彼の病気がどうなるのか、結婚生活がどうなるのか、大物政治家の圧力とどう戦うのか・・・と、興味をかき立てながらも、随所に啓蒙的な内容がさしはさまれる。
市場主義を唱えた経済学者ミルトン・フリードマンの言説を紹介したり、官公庁の詳細なデータを駆使したりして、ネットカフェ難民を生んだ格差社会の実態を語ったり。
まさに「今」の問題を切り取っている。結婚生活、病気、性、子どもの死、DV、格差、貧困、アメリカからの乖離、暴力、資本主義の限界、メディア、政治などなど。書籍からの引用も多い。
啓蒙的なだけならうんざりする小説だろうけれど、主人公が意外に(?)人間臭く情にとらわれる面もあり、ストーリーの面白さもありで、作品の世界に引き込まれた。
読み終わったあと、人によって感想はさまざまだろう。でも心に残る小説、「現在」を考えさせられる小説ということは間違いないです!

RURIKO  林真理子

RURIKO

作者:林真理子
浅丘ルリ子。あんまりテレビドラマには出ないが、わりと好きな女優。今はやせてしまってちょっと怖い容貌に見えるけれど、話し方や演技が実にチャーミングで品のある人だと思う。
表紙の写真を見て分かるように、若いときはめちゃくちゃ美人。
小説は「事実を基にしたフィクション」。浅丘ルリ子、石原裕次郎、美空ひばり、小林旭、石坂浩二など、往年のスターが実名で登場していて、本当にこんな会話が、こんな感情のゆれがあったのかもしれないと思わせられる。
これは作者の力量だろう。
芸能ゴシップ好きであることを隠さない林真理子氏。でも小説は野次馬的な興味を超えて、リアルな人間ドラマになっている。
日本の映画史の記録とも読める。
この本を読んで思ったこと。酒ばかり飲んでいた俳優・歌手はたるむし、(裕次郎・旭)長生きできない。(裕次郎・ひばり)
いつまでも美しいスターというのは、きっとストイックなんだろうな・・・
中学生のとき、祖母の家に泊まってて夜更かしし、「火曜サスペンス」を観た。浅丘ルリ子が絞首刑になるという話。あの時、初めて「絞首刑」のやり方(?)を知り、驚愕した。怖かった。今でも残像が残っている。覚えている人いませんか?

君たちに明日はない  垣根涼介

君たちに明日はない

作者は垣根涼介。この作品で「山本周五郎賞」を獲ったらしい。
山本周五郎賞ということで期待して読んだ。まあ、気楽に楽しめたエンターテイメント、という感じ。
主人公の真介は、リストラを専門に請け負う会社に勤めている。彼の仕事はクビ切りの面接官。過去にずいぶん年上の恋人に去られた経験があるけれど、クビ切り面接でまた八つ年上の好みの女性に出会う。
果敢に、軽やかにアタックする真介。恋も仕事もノリノリ、というところだ。
リストラ専門の会社なんて、世に存在するのか否か、世間知らずの私は知らない。誰だってこんな仕事は厭だろう。泣かれる、怒鳴られる、お茶をかけられる…
けれども暗澹たる気持ちになることはほとんどない。すべて、なんとか上手くいっているのだ。ちょっと都合が良過ぎるところもあるかな。
「サラリーマンは♪気楽な稼業ときたもんだー♪(by植木等。古い!)」今はこんな時代ではない。終身雇用は崩れ、リストラも激しい。
自分が積み上げてきた実績も努力も無視され、外部の人間に弱点をつつかれて退職を余儀なくされる人々。そんな人々の悲哀とその後を、もっと知りたく思った。
仕事に疲れていて、暗い気持ちになりたくないーという人にはオススメです。