フェルマータ  ニコルソン・ベイカー

かつて、渡辺淳一の『失楽園』がベストセラーになったのは、これがポルノ小説だったからだろう。私は渡辺淳一の小説があまり好きではないので(母が何か一冊持っていたので読んだけど、挫折した)『失楽園』も読んでいないけど、性描写の過激さで話題になっていた。
この『フェルマータ』もベストセラーになったらしい。うん。はっきり言ってポルノ小説だ。
主人公の男は時間を止めることができ、その間に女性の服を脱がせたりさわったり、いや、もっと…男の妄想をことごとく実現している感じだ。
一応言っておくけど、最初からこれほどの小説とは予想していなかった。岸本佐知子氏が見出して訳した小説なら面白いかなと思ったのですよ。
ポルノはポルノだけど、面白かった。一般的なポルノ小説は女はこうすれば歓ぶだろうヒヒヒみたいな、男の勝手な予想が入っていると思うんだけど(たぶん)、これはそういうのがなくて、自分の妄想だけを忠実に描いているところが潔い。だからイラつかずに読めて、笑えた。
『フローズン・タイム』という映画があって、それも時間をとめていろいろエッチなことしちゃうんだけど、これは実によい映画だった。男性のスケベ心と純情さは両立する。
時間を止めることができたら、何をするだろうか…エッチなことは、相手が動かないんだったら面白くない。銀行強盗も、あとで従業員が大変なことになるだろうから、しない。おいしーくて高級なケーキやさんに行って、ショーケースのケーキを一口ずつ味見する…でも肥るからなあ。派遣切りとかをやって、平気で儲けている企業の社長のお宅から何かいただいてこようかしら。でも、そこまで自力で歩いていくの?めんどうだ。