砂漠の塩 松本清張

砂漠の塩改版

作者:松本清張
テレビドラマや映画になることの多い清張作品。『砂の器』というずいぶん古い映画をこの間みたけれど、(加藤剛サマが犯人役だった!)本を読むのは(たぶん)初めて。
まだ海外旅行が珍しかった昭和40年ごろ。夫を日本に残しヨーロッパツアーに出かけた泰子だが、一人ツアーを抜け出してカイロに向かう。
そこには、出張先の香港から出てきた真吾が彼女を待っていた。つまり不倫旅行。二人はこの中東の地で、二人の愛を結実させるべく心中を考えていた。
泰子は真吾を愛しながらも、最後の一線を越えようとしない。ホテルも別の部屋をとる。男からすれば、「何なんだこの女」と思うだろうけれど、どうしても善良な夫、保雄のことを裏切る気になれない(とっくに裏切ってると思うんだけれど)
キリスト教徒ではないけれど、「神」のようなものが泰子の行動を束縛する。
保雄は思っても見なかった妻の出奔、不倫におどろき、エジプトに彼女を求めて行く…そこで悲劇。
不倫して海外で情死、なんてちょっと古い話で感動に至らなかった。無教養で、でも善良な(だって快く当時60万円以上する海外旅行に出してくれるんだよ!)夫に嫌気がさし、幼馴染の真吾を愛する泰子の気持ちもイマイチわからない。
ただ、海外旅行が珍しい時代にあって、中東の観光案内、文化のガイドブックとして読める側面もあり、当時としては面白い小説だったんだろうと推測する。
なんか、えらくバブリーな香りのする小説だった。