ゴリオ爺さん改版
作者:バルザック
1835年に発表されたフランスの小説。
題名は『ゴリオ爺さん』だけれども、実際の主人公は田舎からパリに出てきた青年、ラスティニャックのように感じた。
ラスティニャック、ゴリオ爺さん、その他陽気で豪快なヴォートラン、お嬢様だけれど不遇な身のヴィクトリーヌ、老嬢ミショノー、老人ポワレ…個性的な面々が「ヴォケー館」というまかない付き下宿で暮らしている。
ラスティニャックは田舎者だけれど、親戚を頼って訪問し、美しい女性にパリの空気を感じて、なんとしても社交界にデヴューしたい、出世したいと強く望むようになる。
その美しい女性(伯爵夫人)は実はゴリオ爺さんの娘。ゴリオ爺さんは製麺業者だったけれども、娘二人を可愛がり、二人を伯爵、男爵に嫁がせて華々しく社交界に出させるために全財産をつぎ込み、自分は貧乏下宿で余生を送っている。
娘がときどき訪問してくれることだけを楽しみに思いながら…
ラスティニャックは妹の男爵夫人のデルフィーヌと近づきになり、親交を深めるようになる。娘の話を聞きたがるゴリオ爺さん。ラスティニャックとゴリオ爺さんはお互いに信頼を寄せるようになる。
娘二人の婿はけちんぼーで、財布を握らせてくれず、父親のゴリオ爺さんに何度も金の無心をする。とうとう一文無しになってしまい、挙句に病気になる爺さん。その最後を看取ったのは娘ではなく、ラスティニャックだった…
ゴリオ爺さんの生き方は、悲しい。働いて働いて、娘のために財産を使い果たしても、最後に娘に会うこともできない。それを予感していたような言葉はあったけれども。
むしろ物語の面白さというのは、田舎者だったラスティニャックがパリを知り、世間を知り、人間を知り、大人になる過程。これからの彼がどう生きるか、興味深い。
続編もあるみたいだけれど、ちょっと手に入りにくいみたいで、残念。
最近はフランスの近代小説がマイブームなんだけれど、さすがは恋の国というか、女性の貞操観念が薄いなあと思う。お国柄って面白いですね。もちろん、日本にももっとおおらかな時代はあったけれども…