死刑でいいです

著者:池谷孝司
2000年7月、17歳の時に母親を金属バットで撲殺。2005年、見知らぬ姉妹をマンションで待ち伏せし殺害、放火。
2009年7月、死刑執行。
犯人の山地という男の生育歴や、犯罪に至る過程を、近頃にわかに注目されている「アスペルガー症候群」をキーワードに、専門家の意見を交えて記したノンフィクション。
何の縁もゆかりもない、愛されて育った姉妹を殺した行為は許されるものではないと思う。
たとえ死刑が執行されたとしても、遺族の心の傷は一生癒えることはないだろう。
しかし、山地という男も、気の毒な育ち方だ。母を殺した理由を
・借金があるのに隠して、自分の財布(新聞配達で稼いだ金)から抜き取っていた。
・無断で恋人に電話をかけた(無言電話)。
としている。母親も人とコミュニケーションをとるのが苦手だったもよう。
父親を早くに亡くし、かなり家庭は困窮していたらしい。性格からいじめにも遭い、その上に勉強にもついていけず、高校進学をあきらめざるを得なかった。
少年院から出てきたとしても、引き取り手がいない。結局「ゴト師」のグループに入って全国を転々とし、逮捕されたことも。
少年院の中では優等生だったらしいけれど、その後の生活をどうするか、方針まで立てないとやはり更正は無理なんだとわかる。
アスペルガー症候群。人の心や場の空気を読むのが大変困難だけれど、もちろん、すべての人に犯罪傾向があるわけではない。育て方や環境によって、ちゃんと立派に生きている人も多い。
本当に許せない犯人。「死刑でいいです」と言われたら「そりゃそーだ!」と言い返すけれども、生きていていつも苦しかっただろうと思う。
偏見を助長することはよくないけれど、発達障害についての知識が広がり、支援やコミュニティーの輪が広がることは本当に大切なことだと思う。