角田光代にしては珍しい、犯罪を扱った小説。今まで読んだ角田作品の中ではナンバー1だと思う。
1章目は希和子の視点から描かれている。
恋人だった男その妻の家から、赤ん坊を盗み逃走する希和子。希和子は男の子どもを身ごもったことがあるが、やむなく中絶し、男の妻から「がらんどう」と言われた経緯がある。
希和子は曲折を経て、エンジェルホームという女性だけの宗教団体のようなコミュニティに逃げ込み、そこからまた小豆島へ逃げる。薫、と名づけた赤ん坊と一日でも長くいられるように祈りながら生活する希和子。こちらもつい感情移入してハラハラしながら読んだ。
2章目は薫改め、4歳で両親のもとに返された恵理菜の視点から描かれる。
恵理菜は18歳になっているが、一人暮らしをし、両親との関係はよくない。
恵理菜自身も不倫の子を身ごもって…
希和子のしたことはとんでもない犯罪だけれども、同情すべき点もある。犯罪がその後の被害者の生活や心に傷を残す深刻さもある。なかなか割り切れない。ストーリーもディテイルも面白くて見事。互いを分からぬまま希和子と恵理菜が会うラストシーンでは涙が出てきた。
ちょっと似たストーリーで、「子宮の記憶」という映画もあります。主人公の男の子が柄本明の息子で、ちょっとイケメンではないのが残念だけど、松雪泰子がすばらしく良いです。
松雪泰子って、素顔はきっと単純で素直な女の人だと感じるんだけど、演技するといいんだよなあ。
カテゴリー: 小説 泣ける・・・
あなたを探して
『追憶』という古い映画を見た。ロバート・レッドフォード主演。女が主義・思想を捨てられないために、二人の関係がダメになってしまうという悲しくせつない映画。女が頑固になりすぎると幸せは遠いのかも。
『あなたを探して』マルク・レヴィ著。フランス人作家だけど、主人公はアメリカ人。
スーザンとフィリップは幼なじみで恋人。両親を事故で亡くしたスーザンはフィリップをニューヨークに残して、平和部隊に参加し、ホンジュラスに行ってしまう。
愛し合う二人は手紙を送りあう。過酷な日々にスーザンは変わっていき、フィリップもスーザンを待つことに疲れて…スーザンはフィリップを愛するけれども、やはり「変節」はできない。
この作者の作品は映画化もされたことがあり、たしかにハリウッドラブストーリーみたいな筋だった。いろいろなドラマチックが用意されていて、読みながら「えーっ!」と声が出たり。
ストーリーの面白さは100%保証。
私よりも有名な人が推薦したら、ベストセラーになると思うな。
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