獅子頭 楊逸


【送料無料選択可!】獅子頭(シーズトォ) (単行本・ムック) / 楊逸/著
購読している新聞に連載されていた小説。
楊逸氏の小説は好きなんだけれど、新聞小説はどうも苦手で、読み続けられた
ためしがない。
単行本になったので、イッキ読み。
中国の農村の次男、二順が、父親の転職によって雑技学校に入り、
ケガをきっかけに料理人を目指し、腕を磨き、結婚し、
妻子を置いて日本に行き、そこで年上の女性に誘惑され妊娠させてしまい、
結婚する羽目になり、苦悩する…といった内容。
ユーモアもあり、ヴィルドゥングスロマンの趣もあり。
田舎の純朴な青年の内面はなかなか成長しないのだけれど、
周りの人に支えられていることにいつか気づくといったさわやかな結末だった。
中国人といえば、最近の日本ではなんだかよくないイメージがつきまとうけれど、
楊逸氏の小説には不思議と悪い人は出てこない。
「ここで普通裏切るだろう」という展開の場面でも、裏切りがなくてほっとする。
作者の純粋さと性格のよさが伝わってきます。妙な比喩は笑わせてくれるし。
この人に芥川賞をあげてよかったと思う。
私が言うなんて偉そうだけれど、才能あると思うなー。

キャベツ炒めに捧ぐ 井上荒野


【送料無料選択可!】キャベツ炒めに捧ぐ (単行本・ムック) / 井上荒野/〔著〕
60歳を少し越えた女性3人が主人公の連作小説。
大好きな夫に離婚された女、夫を最近亡くした女、一人の男を思い続ける女。
いずれにせよ、今は独身の三人がお惣菜や「ここ家」で働いている。
若い米屋の兄ちゃんも三人のアイドルとして登場。
あまり期待しないで読んだけれど、なかなかよかった。
ホロリとするところも。
還暦を過ぎた女性…昔なら、お婆ちゃんってところだけれど、
この三人に関してはまだまだ純情、未完成な感じ。
三人ともかなり辛苦に満ちた人生だと思うんだけれど、
「希望」みたいなものを失っていない。
でも、浅はかなわけではなく、年齢を重ねて深みもある。
今の還暦を過ぎた女性たちって、こんな感じなのかな?
妙に悟ることも、諦めることもあんまりないのかな?
だからアデランスイブも売れるんかな?
60歳まであと20年。色気ムシみたいな気味悪いばあさんには
なりたくないけれど、「希望」と少しの「未熟さ」は
残しておきたいなあ…
あと、小説に出てきた「食べ物」たち。おいしそうでした。
食べ物を題材にしてベストセラーになった小説よりは、よっぽど。

WANTED!!かい人21面相 赤染晶子


【送料無料】WANTED!!かい人21面相
女子高校生が主人公。かのグリコ・森永事件の犯人が自分たちの街に
いると信じる楓とわたしは、高校のバトン部に所属している。
森永のキャラメルにつられて、いっしょに犯人探しに自転車で駆け回る。
私は楓に振り回されている。楓はバトン部ではレギュラー。私は
万年補欠。マズルカステップだけが妙にうまくなっている。
ある日楓は、バトン部の顧問が「かい人二十面相」
だと断定し、それが波紋を呼ぶ…
「女子高文学」といった趣。ストーリーはまあおいておいて、
ディテイルにユーモアを感じた。マズルカステップって何だ?
相撲の四股みたいなものか?とイメージしつつ…
青春時代の女子同士の微妙な力関係が描かれていて、読みやすかった。
この本には三篇の小説があったけれど、あとの二編はどうしても読めず。
純文学過ぎて、私には理解不能だった。