存在の美しい哀しみ
作者:小池真理子
がんで亡くなった後藤奈緒子という女性と、彼女にかかわりのある人々を主人公にした連作小説集。
奈緒子は最初の結婚をしたときに産んだ息子を夫の下におき、後藤と結婚した。
自分に異母兄がいると聞かされた娘の榛名は、母の死後ひそかに兄をたずねてプラハに行く…などなど。
小池真理子氏らしく、恋愛関係はかなりシビアでドロドロしたものであるにもかかわらず、プラハやウィーン、東京の街の風景のなかで美しく描かれる。
作者自身が美人だからか、小池作品の主人公たちはたいてい容貌のよさげな人が出てくるような気がする。
洗練されているのも、「東京出身」というところに要因があるのだろうか。
容貌に恵まれているかそうでないか、都会育ちか田舎モノか、女性作家の作風はそれでずいぶん変わってくると思う。
江國香織氏も東京出身でまずまず美人。彼女の小説も泥臭くないないもんなあ。
さて、58歳になるアラ還の作者、ゆくゆくは老人同士の美しすぎる恋愛を是非書いてほしい。