永遠の夫改版
作者:ドストエフスキー
ドストエフスキーにしては短い作品。テーマも壮大なものではない。
裁判がうまく行かずイライラしている40前の独身貴族ヴェリチャーニノフ。避暑にも行かず、ペテルブルグでもんもんとしていた。
その彼の前に喪章をつけた、見覚えのある奇妙な紳士が現われた。それは、以前にヴェリチャーニノフがその妻を寝取った男トルソーツキイだった。トルソーツキーは、妻の死をヴェリーチャニノフに告げにきたのだった。
彼は、ヴェリチャーニノフが妻ナターリヤと関係を持っていたことを知っていたのか、どうなのか…。
題名を見る限りはトルソーツキーが主人公のようだけれども、実際小説はヴェリーチャニノフの視点から描かれる。トルソーツキーは不気味で、卑屈で、何か執念深そうな男。でもずいぶんと年下の女房を新たに娶ろうともしている。
女に不自由はしないけれども、「夫」にはならないヴェリチャーニノフ。愛人を持つ妻にしがみつくしか能のない「永遠の夫」トルソーツキー。どちらの生き方も、なんだか哀れで不安定。
マゾッけたっぷりのトルソーツキーの人物像にはイライラさせられた。こういう人が、意外にしぶといというか、強いのかもしれないなと思う。
好きには到底なれないけれど。