掏摸
作者:中村文則
芥川賞作家の中村文則氏の最新作。新聞などでけっこう褒められていたので期待して読む。
主人公は東京を仕事場にする天才スリ師。彼のターゲットはわかりやすい裕福者たち。
ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて一度だけ、仕事を共にしたことのある、闇社会に生きる男。木崎はある仕事を依頼してきた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。もし逃げれば…最近、お前が親しくしている子供を殺す」
その瞬間、木崎は彼にとって、絶対的な運命の支配者となる。主人公は仕事をやりおおせるのか?子どもの運命は?
母親に万引きを強要されている子どもと親しくなる主人公。この子どもも救いようがないし、主人公も「犯罪者」。でも、なぜか主人公の気持ちになってしまって、彼が「仕事」をするときの緊迫感、緊張感が伝わり「うまくやれよっ」と思ってしまう。これは力量だろう。
ただ、テーマはやはり「悪」と「どうしようもない運命」。犯罪に走らなければならない人生もあるのかもしれないと暗澹たる気持ちになる。
今朝の新聞に、刑務所から出てきた人の多くが再犯してしまう、と書いてあった。受け入れる場所がなければ、まあ、そうだろうなと思う。
しかし、「スリ」って、自分がされたら許せないけれど、時代劇とかでは「本当はいい奴」ってキャラが多いですね。
自分が犯罪をして刑務所に入ろうとすれば…「食い逃げ」ぐらいかなあー。さんざん食べて「お金ありましぇん」。そうなりたくないと思う年末です。