私の宗教入門
著者:島田裕巳
昨日は「カルト」に関連する小説を紹介したが、今日は宗教学者の「宗教をめぐる冒険」といった感じの本。
東大に入って尊敬する師と出会い、宗教学を専攻し、ヤマギシ会に研究のために赴いてミイラ取りがミイラになって7ヶ月すごし、脱退して苦しみ、また研究に入り…青春記の趣もある。
この本は1992年に『イニシエーションとしての宗教』として出版されたものを増補し、ちくま文庫から出されているけれども、95年のオウム事件が引き起こした筆者の挫折についても最後の章で語られている。
新旧を問わず宗教を考察し続けてきた著者。実際にヤマギシ会に入ってしまういきさつなどは非常に興味深かった。
ヤマギシ会から脱会したあとの苦悩についても。ヤマギシ会から脱会したあと、自殺する人は多いらしい。人間というのは、経済的な問題や病気の問題だけではなく、思想、宗教の問題でも挫折し、死を選んでしまう生き物なのだと知る。
真面目に生きようとする人ほど…
昔の職場の同僚が、懐疑的な気持ちを持ちながら統一教会の合宿みたいなものを体験したと聞いたことがある。彼は全然影響を受けなかった、と言っていたけれど。
島田氏は「イニシエーション」という言葉をたびたび用いていた。宗教において、根源的な体験であり、イニシエーションを経験することで共同体に「大人」として入ったり、宗教の信者になったりするという。古い共同体では未だに残っているイニシエーション。
日本ではこういうことはないから、若い人に宗教が必要とされるのだろうか。
会社の飲み会で新人が飲まされたり、大学で新入生が先輩にいじめられたりすることもある種のイニシエーションだとか。…私にそんなことあったかな?まだ大人になってないかもーー。
印象深かった言葉。筆者自身の言葉ではなく、引用なんだけれども
「善人に悪いことをさせるのが宗教だ」という一節。ちょうどカルトにまつわる小説を読んだところだったので、なるほどと思ってしまった。
しかし島田氏は、常に客観的な姿勢で新宗教を語る。貴重な宗教学者だと思います。