罪と罰の果てに  永瀬隼介

罪と罰の果てに

作者:永瀬隼介
海辺の町に暮らす二人の少年、幸太と東一。それぞれに、決して幸せとは言えない家庭の事情があった。
その二人を救ってくれた男、キリストさん。街に住み着き、廃品を集めて暮らしている。
幸太はある目論見から、クラスでひとり浮いている不幸そうな少年聖斗をキリストさんに合わせる。聖斗は幸太の目の前でキリストさんを撲殺し、金を奪って逃げる。
17年後、東一はヤクザの関連した企業で働き、聖斗は派遣会社を立ち上げ、幸一は警察官になっていた。
聖斗には美しい妹、聖美がいたが、ある事情で両親を失い、たった二人で生きてきた妹のために中卒で働き大学に行かせ、聖美はアフリカを支援する活動を始めていた。
彼らの人生が錯綜し始め、17年前の真実が明かされていく―――
中心となる三人の男がそれぞれ強烈なキャラクターで、屈折しまくってて、ハードボイルドだった。しかし、これからどうなるの?とページを捲らせたストーリー展開。まあ面白かったと思う。
聖斗と聖美はあるカルトのコミュニティで生活していたんだけれど、近頃こういったカルトを扱う小説が多いなあと思う。
『1Q84』もそうだし…こういう「カルトの悪」っていうのは、小説家が描きたいものなのだろう。
新興宗教にまつわる小説を初めて読んだのは高校一年のとき。林真理子の
紫色の場所
20年以上前の作品だけれど、今読んでもけっこう面白いかも。
不景気で、人と人との紐帯もズタズタになって、「宗教」が必要な時代かもしれない。私も特に信仰はないけれど、宗教は大切だと思う。しかし、善人の顔をして人の心をもてあそぶようなカルトには本当に用心しなければいけませんね。