巡礼
作者:橋本治
橋本治氏の著作はエッセイなんかはたまに読むけれど、小説は
『勉強ができなくても恥ずかしくない1~3』
以来二作目。
主人公は下山忠市。70歳を過ぎ、今はワイドショーにも取り上げられるぐらいの「ゴミ屋敷」に住み、周囲の住人たちの非難の目にさらされている。
最初は下山の輪郭が全く見えず、住人がゴミ屋敷をひたすら迷惑がる描写や、下山の近所に住む老婦人の回顧が続くのだけれど、二章からは下山のそれまでの人生が長々と語られる。
戦時下に少年時代をすごし、敗戦後、豊かさに向けてひた走る日本を、ただ生真面目に生きてきたはずなのに、家族も自分の生きる道も失ってしまった。
不器用で孤独な男の一生。
「ゴミ屋敷」。ワイドショーではよく取り上げられるネタだけれど、私にはあまり興味が無い。近所に居たら困るけれども、その「住人」を理解しようとは思わない。だって、全く理解できないもの。
しかしゴミ屋敷の住人を主人公にして、その内面を掘り下げようとする作者の試みは流石だなあと思う。理解しあえないのが人間、ということを前提におきながらも、人間にはそれぞれの人の歴史があり、唯一無二の「魂」があるということを示している。
なんでこの小説が『巡礼』なの?と終盤までナゾだったけれど、最後に納得。
下山の人生は悲惨といえば悲惨だけれど、最後には一条の光が見えてジーンとくる。
大人向けの小説として素晴らしいと思います。
ゴミ屋敷の住人の見方が変わるかも・・・一ヶ月ぐらいは。