こうふくみどりの
作者:西加奈子
主人公は中学二年のみどり。大阪のある下町に住んでいる。父親は「よその家」の人で一度しか会ったことがなく、予知能力のある祖母、タバコばかり吸って働かない母、DV夫から逃げてきた藍とその子ども(四歳なのにまだしゃべらない、おしっこできない)桃と暮らしている。
みどりの家庭環境は複雑といえば複雑なんだけど、美味しいご飯を作ってくれる藍がいて、母も祖母も好きで、家庭はホッとする場のよう。
学校では彼氏を切らしたことがない明日香という親友もいる。
コジマケン、という背の高い、雰囲気のある男の子がみどりの家の近所に引っ越してきて、みどりはなんだか気になってしかたがない。
明日香も同じみたいで・・・
こう書くと、「中学生の恋愛話」みたいな小説に感じるかもしれないけれど、この小説のテーマは恋愛ではない。家族とか、女の業とか・・・二つの殺人事件まである。
女だけの家族(猫までメス)というのを経験したことがあるけれど、なんだか気楽で、ゆるくてホッとするものである(お父さんごめんなさい)。そんな感覚を懐かしく思い出してしまった。
途中で挿入される女の人の独白が、わけがわからなくてストーリーの邪魔だったけれど、最後まで読むとつながってすっきりした。
『こうふくあかの』という小説とセットで読む本のようだけれど、(『ノルウェイの森』みたいね)これだけでも十分に面白い小説だった。