津軽
太宰治が、昭和19年に津軽を旅行したときの記録。
津軽風土記の執筆を依頼されて書いたものだが、故郷での人との交流が中心になっている。
この本を読んだきっかけは「秘密のケンミンショー」という番組。あの番組はけっこう好きで、自分の故郷の事が出ると嬉しくてニンマリしてしまう。
番組で「青森県民は花見の際、シャコと蟹を食べる」とあり、太宰治の『津軽』にもそういう記述がある、とあった。
新潮文庫になっている太宰作品は青春時代にだいたい読んでいたけれど、『津軽』は未読だったので読んでみた。
確かにこの本には蟹がよく出てくる。もっと驚くのは酒。昭和19年だというのに、ビール、酒、りんご酒・・・ビールにいたっては山歩きの際に水筒に入れていくなんてことも。
故郷の知人、兄弟たちとの再会の場面では、太宰らしく、はにかみとずうずうしさが交錯していて面白い。
「自分は上品な育ちの人間ではない」という太宰。名士の家に生まれた居心地の悪さが彼の人生を左右していて、故郷に帰ってもどこか受け入れてもらえないのではとビクビクしている心も伺える。
しかし、最後の場面。自分を育ててくれた「たけ」との再会。ここがクライマックスだ。「たけ」は太宰にとって産みの母以上に「母」であり、自分の「ふるさと」でもある。
このくだりを読んで、『坊ちゃん』の清を思い出す人は多いだろう。
たけとの再会で、自分のこれまでを肯定するところでは、じいんときた。
心洗われる名作だと思います。