どこから行っても遠い町 川上弘美

どこから行っても遠い町

作者は川上弘美。谷内六郎氏の描いた表紙の絵もいいですね。
東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人びとの、ありそうでなさそうな日常を描いた連作短編集。
男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房……
時々幸せで、時々不幸で、でもトータルすれば、最後の話に出てきた魚屋の死んだ女房のように「捨てたもんじゃない」人生を独特の川上タッチで描いている。
まあ、デジャビュ(正確な仏語ではデジャ・リュ)というか、これまで読んだ川上作品に似通っているところもあったけれど、『古道具 中野商店』に比べるとやや人生の暗い側面を描いていたように感じる。
川上作品は言葉の使い方が独特。ふんわりしたひらがなっぽい文章の中に、古語めいた言葉や漢語が挿入されて、そこでひっかかりがある。
この、引っかかる感じ、が私は好きです。
あと、川上氏は「商店街」をよく描く。東京出身で、商店街と縁が深いのだろうか。エッセイなどによると、よく居酒屋などに飲みにいくらしい。「行きつけの飲み屋」を持つ人と、そういう習慣がない人と、やっぱり人間の種類は違う気がする。
「行きつけの飲み屋」私には縁がないけれど、そういうところで構築される人間関係というのは仕事も関係なし、アルコールも入って垣根が低そうで楽しそう。
金沢で暮らしていたとき、「行きつけのタイ料理屋」はあった。美味しかったのに・・・もうなくなったみたいで残念無念。