本人は否定しているけれど、どうしても『罪と罰』のラスコーリニコフと著者が重なってしまった。
二回殺人をし、今は無期懲役で服役している著者が、出版社に原稿を送ってこの本ができたらしい。「人を殺すとはどういうことか」が分かるかというと、よく分からない。
大きく分けて、殺人をした自分のことと、刑務所で出会った殺人犯の肖像について書かれている。
任侠(ヤクザ)の世界の殺人は、暴力団が究極的には暴力で物事を解決しようとするところだということを考えると、ちょっと特殊。その世界で完結している感じだ。しかし、構成員にも家族や愛する人がいるわけで、殺人は許されることではない。
ヤクザ以外の殺人犯も、おどろくほど罪の意識がない。「あんなところにいたから殺されちゃうんだよ」とかなんとか。こういう性質というのは、ちょっと治らないのではないだろうか。
受刑者によく見られる特徴を18個箇条書きしているけれど、そのなかで「共感性がない」というところが気になった。私がこういった本に興味があるのは、「共感性」のない人が増えているのではという懸念から、というのもある。殺人まではしていなくても、人の痛みや悲しみに驚くほど鈍感な人は増えているのではないだろうか。いろいろな社会的状況が産んだ結果として。
筆者も二人の人間を殺している。文章からも伺えるように、恐ろしく知能の高い人のようだけれど、殺害当時の冷酷さ、逡巡のなさ、他者のことよりも自分の規範に対する強い固執…やはり何かがもともと欠けている人だと思ってしまう。
筆者の父の存在。この父も前科者で、筆者を殺人者にしてしまった面もあるだろうが、また改心させるきっかけにもなった人物。親子、家族の愛というものがどれほど大切かが分かる。
刑務所には一生入りたくないけれど、本も読めるし、ラジオもテレビもあるし、三食つくし、快適そうですね。クリスマスケーキは、要らないんじゃないかと思う。
人を殺すとはどういうことか