家庭の医学 レベッカ・ブラウン

原題は『Excerpts from a family medical Dictionary』。「家庭医学事典からの抜粋」。
母が癌に侵されていることが判明し、その治療や手術に立ちあい、母を介護し、亡くなった母を看取るまでを綴ったもの。
事実が淡々と述べられている。だんだん弱り、容貌が変わり果て、徐々に死んでいく母。
感情的にならずに描かれているが、母の変化や介護の描写が克明に、具体的に描かれていて、かえって心をゆさぶられた。
死に向かう母を「どうにかしてあげたい」という思いが行間から伝わってくる。
ノンフィクションらしいけれど、小説のように読んだ。事実を書くだけでもひどく文学的だと感じた。
人間にとって病気、死は避けられない。家族の死も、避けられない。今もあると思うけど、これから優れた「介護文学」が増えていくだろうな。
切ない作品だった。私も、わずらう家族を看る日が来るかもしれないけれど、何もできなくても「どうにかしてあげたい」という気持ちを持てる自分でありたい。