角田光代の短編小説集。1992年から2007年までに雑誌に掲載されたものを、書かれた順に集めている。
あとがきで著者が述べているように、ずいぶんと時間差のある小説がまとめられていて、すごく不遜な言い方をすれば、角田光代の「成長の跡」みたいなものを感じることができる。
デビュー作が良くて、だんだんダメになっていく作家も多いけど、角田氏はどんどんうまくなって今はノリにノッてる感じ。初期の角田作品は「好きじゃないかも」と思っていたけど、今はとても好きな作家の一人だ。
旅ものが3編。家族ものが4編。やはり最近の作品が好み。
書名にもなっている「ロック母」(川端康成文学賞受賞作)と「父のボール」という作品がすばらしかった。親子の愛憎が見事に描かれている。
「ロック母」だけでも、立ち読みしてでも読んでいただきたい。実母を田舎に置いてきた人は、何かきっと感じるものがあると思う。