赤ひげ診療譚  山本周五郎

赤ひげ診療譚改版

作者:山本周五郎
主人公は若き医師、保本登。幕府の御番医をめざして長崎遊学から戻ったが、心ならずも「小石川療養所」で見習い勤務を命ぜられる。
医長は「赤ひげ」と呼ばれる新出去定。エリート意識の強い登は診療所に幻滅し、赤ひげに反発するが、次第に赤ひげの精神に心を惹かれていく。
連作小説の形で、江戸時代の下層の人々の苦しみや悲しみ、そして登自身の成長が描かれている。
赤ひげの言葉で印象深いものがある。
「病気が起こると、ある個体はそれを克服し、別の個体は負けて倒れる。医者はその症状と経過を認めることができるし、生命力の強い個体には多少の助力をすることもできる、だが、それだけのことだ、医術にはそれ以上の能力はありゃしない」
現代の医学にも通じる真実だと思う。負ける個体はどうしたって負けるのだろう。
身体の病よりも心の病の方が深刻な患者が多く描かれてもいた。貧困、トラウマが病気を引き起こすことも・・・
今、「救命救急24時」というドラマをやっていて、面白く観ている。このドラマと海外ドラマの「ER」は舞台は似ているけれど全然違う、ということを夫と話していて、結論は、日本の医療ドラマは叙情詩であり、「ER」は叙事詩である、ということになった。
この小説にしても、医療ドラマにしても、「人情」を中心にそえているのが日本の特徴なのかもしれない。まあどっちでも、面白ければよいのですが。
さて、この本は時代小説が苦手な私にも面白かったですよ。