言い寄る 田辺聖子

言い寄る

作者:田辺聖子
田辺聖子にハマッっていたのは中学生のころ。今考えるとマセていると思うけれども、通っていた中学校の図書館は会議室の片隅みたいなところで小さく、ロクな本がなく、借りたいものが少なかった。
まずは赤川次郎に凝ったが(時は角川映画全盛時代!)すぐに飽きてしまって、なぜか田辺聖子の恋愛小説に夢中になった。母親にせがんでは文庫本を買い集めて、「男女の機微」を学んだ。実践にはまるで生かされなかったが。
おそすぎますか?
という短編は、働く女性なら是非読んでおくべき一編。
以前、夫より帰りが遅い日、夕飯を冷蔵庫に入れてメモを置いて仕事に行っていたとき、中学生の時分に読んだこの本の結末が頭をかすめたこともあった。
さて、『言い寄る』は昭和48年に書かれた本。36年前の作品だけれども、まったく古くない。
主人公の乃里子は31歳のキャリアウーマン。好きな仕事をし、性的にも開放的な性格でのびのびと独身生活を楽しんでいる魅力的な女性。
しかし乃里子にはずーーっと片思いをしている五郎という男がいる。どうしても「言い寄れない」。気のあう剛という男、大人の男性の魅力で乃里子を誘惑する水野という男、乃里子の周りには男がいるのに、恋焦がれる五郎だけはまったく乃里子に振り向いてくれない。
好きな男性には振り向いてもらえず、愛していない男性からは求められて・・・まことによくあることだけれど、その切なさがこれほど巧みに描かれている作品は少ないと思う。
私的生活
苺をつぶしながら
という続編もあります。これも面白い。
近頃の恋愛小説に物足りなさを感じている方にオススメです。