綴られる愛人

井上荒野氏の作品。

わりと有名な児童文学作家の柚は、夫に支配に耐えかねていた。
仮名、仮プロフィールで、「綴り人の会」という文通代行業に入り、
「クモオ」という男性と文通するようになる。

「クモオ」35歳の、空手が得意なエリートサラリーマン、というのは嘘で、
実は富山県魚津市に住む三流大学の三年生。

二人は手紙をやりとりするうちに、盛り上がってしまう……

おもしろくて一気読み。

手紙だけの不倫なのだけれど、なんともドキドキする。
そして、人間の汚さ、いやらしさが地の文からも手紙文からも立ち上がる。

小説家ってすごい。文字の力ってすごい、と久々に感じた小説でした。