私とは何か
著者:池田晶子
前にも紹介した死とは何か
魂とは何か
と同様、池田晶子氏の未発表原稿を編集した「さて死んだのは誰なのか」シリーズの最終作。
比較的読みやすく、面白かった。哲学ブームへの懸念、ネット社会・政治など社会問題への私見、犬への思いなどなど。
比較的「自分」を語る文章が多くて、興味深かった。犬にまつわるエッセイも多数。私は断然犬より猫派なので、イマイチ共感できないのが残念なんだけど、犬好きの人には「わかる!」というところだろう。
共感して嬉しくなってしまったのは、「外見と偏見」というエッセイの中の「口髭を生やした男性に対する警戒」。
〈口髭の陰から相手の顔色を窺っている、とても小心なものが見えるから。クリエイティブな自由人なのだと人から見られたいと思うほどには、自分はクリエイティブでも自由でもないということを、彼らはじつは自分でよくわかっているのである〉
手を叩きたくなる。私も男性の外見をあれこれ言える身分ではないけれど、「ヒゲ(のデブ)」だけはダメ。イチロー的なヒゲはいいけど。
開業医にも多い気がする。とくに産婦人科。院長が「ヒゲ(のデブ)」だったという理由で、この病院はもう来ない、と思ったこともある。なんかカリスマを装ってる気がするのだ。
かなり偏見だけど、偏見もちょっとはないと人間面白くないですよね。
さて、この本の目玉付録(?)は、池田氏が小学校6年生のときに書いた短編物語。
文章の確かさ、物語の構成の上手さには驚かされるものの、小説から滲みでる純粋さや優しさ、倫理観は子どもらしい。
辛口とも言われる氏だけれど、子どもの頃の倫理観はずっと彼女のベースになっていたんだと思わせられた。