生きるとは、自分の物語をつくること 小川洋子  河合隼雄

明けましておめでとうございます。
生きるとは、自分の物語をつくること

河合隼雄氏が倒れられる直前に奇跡のように実現した、貴重な最後の対話。
第一章は小川氏のベストセラー
博士の愛した数式を題材にしている。(今まで読んだ小川洋子氏の作品の中では一番面白かった!)
もともとは数学の教師をしていた河合氏と、数学の話で盛り上がる。小説の中に何気なく使われた数字、記号の深い意味。それは小川氏が意図していたものではなかったりする。
第二章は「物語」について。
小川氏は、 人は生きていく上で難しい現実を どうやって受け入れていくか ということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、 自分の心の形に合うように その人なりに現実を物語化して 記憶していく作業を必ずやっているという。
河合氏は、臨床心理士は 自分なりの物語を作れないヒトを手助けするのだという。
生きにくい人生には、物語が必要だし、それはどこに着地するかわからないから面白いというところもある。
河合氏が「偶然の力」を信じているというのも面白い。人の物語をつくるときに、予断をせず向き合うことが臨床心理の立場では大切なんだと思った。
もちろん、他者の物語を尊重することも。
小川氏も、自分を物語の絶対的な創造主ではなく、物語の奉仕者と位置づけている。
自分の人生も、他者の人生も、物語も、一つ一つが大切なものなんですね。
つい、他人の人生をいい加減に考えてしまう私だけれど、ちょっと反省。他者へのまなざしが(一瞬)温かくなった。