昭和天皇
著者:原武史
政治史の中の昭和天皇ではなく、「お濠の内側」の昭和天皇について書かれた本。
新書なので深みには欠けるけれども、昭和天皇の肖像を知る上でちょっとは役に立つかも。
昭和天皇・・・もう人生の半分以上を「平成」で生きてきたので、印象は薄い。高校時代、受験勉強に必死だった頃に「下血」という言葉が連日新聞紙上にあったことは覚えている。
あと、もっと小さい頃だけれど、昭和天皇が、戦争について「遺憾」という言葉を用いた、ということも大ニュースになった。「遺憾」という言葉を初めて知った。「遺憾」という熟語は私にとって、昭和天皇とセットになって出てくる。
さて、この本で強調されていることは、昭和天皇が「宮中祭祀」に対して非常に熱心だったということ。大正天皇が病弱で祭祀にあまり参加しなかったのに対して、昭和天皇は新嘗祭や神武天皇祭など多くの祭祀で「神」への祈りを重ねた。
皇族間の確執や、母である皇太后との微妙な関係、(皇太后はけっこう干渉する人だったもよう)なども、資料をもとに紹介している。
生物研究に非常に熱心だったことも。これは今上天皇にも秋篠宮にも受け継がれていますね。
天皇の(実はもっとも)重要な仕事として宮中祭祀がある、ということは最近になってクローズアップされてきた。
雅子妃の病も、宮中祭祀に出ることが苦痛であることが一因とも言われている。(おすべらかしにしたり、身体を清めたり・・・で二時間の準備が要るそう。近代的家庭に育った人には確かにしんどそう)
今上天皇も非常に祭祀には熱心なようだけれども、これからどうなっていくのか。長生きして、次の次の天皇ぐらいまで見つめたいものです。