大人のための国語教科書
著者:小森陽一
高校で教えた経験もある著者。(今は東大大学院教授。)教師の必携アイテム「指導書」の内容の問題点を指摘しつつ、教科書によく出てくる著名作品について、指導書の内容を超えた独自の読みを展開する。
俎上にのせられた作品は『舞姫』『こころ』『羅生門』『永訣の朝』『山月記』。ね、授業で読んだことあるでしょう?
私は高校の時に『こころ』『羅生門』『山月記』を習ったことは覚えている。『舞姫』はたぶん、私の出身高校のレベルでは無理だと先生が思ったんでしょう、教科書にはあったけれど授業は省略だった。
授業はまったく退屈で、先生が黒板に書きまくる説明とか、要旨とかをひたすら写し、それをなるべく暗記してテストに臨むというもの。生徒のレベルを鑑みてか、ディスカッションとか、そういうのは全くなかった。私は現代文が得意だったので、授業はあまり聞かず、ノートすらとらず、教科書だけは読んで、でもテストの成績はよかった。(イヤな生徒…)
実をいうと、『羅生門』は国語教師として教えたことがある。大学出たばかりで私立高校に勤務していた時代。非常勤なのに研究授業をさせられ(今思えば有難いが)うまくいかずに反省会で吊るし上げをくらった。生徒に感想を書かせたのに、まったく生かされていなくて。
あの頃の生徒には申し訳ない。一生懸命のつもりで空回りばかりしていた。自分の「読み」も指導書の範囲を出るものではなかった。
さてさて、この本ではステレオタイプな読み方から一歩進んだ読み方を提示している。
『舞姫』では主人公の「罪」を一歩深め、『こころ』では男女の三角関係よりも男性同士の恋愛に言及し、『羅生門』では天皇・政治への批判を読み取り、『山月記』ではスルーされがちな李徴の漢詩に着目する。
共通しているのは、小説世界だけではなく、その小説が書かれた時代や、舞台となる時代に着目しているということ。
たしかに、人間の行動は時代に支配されてるところが大きい。こういうことも勉強して授業をしなければいけないのね…
小説を授業で勉強する意味ってなんだろう。これらの「名作」を趣味で読む高校生は0.1パーセントぐらいだろうし、授業で読んで、自分の生き方を考える、他人の人生に思いを馳せる…そういうことが少しでも積み上げられていったらいいですね。
全国の国語教師のみなさんにとっては、きっと読みたくなる一冊です。