善良な町長の物語
作者:アンドリュー・ニコル
本の装画はベラスケスの『鏡のヴィーナス』。本の中では重要な意味を持つ絵です。
作者はスコットランドの作家。デビュー作である本書は、スコットランドのファースト・ブック賞を受賞したとか。(それがどのくらいの賞かは知らないけれど)
とってもロマンティック、100パーセントの恋愛小説だった。
バルト海沿岸に位置する小さな町の町長、「善良な」という枕詞がつくティボ・クロビッチ町長。彼は秘書であるアガーテ・ストパックに恋をしていた。
町長は独身だけれども、アガーテは既婚。しかし、赤ん坊だった長女を喪って以来、夫との仲は冷え切っていた。
徐々に距離を縮め、ランチを一緒にするようになる町長とアガーテ。しかしアガーテに夫がいることで逡巡し、いつまでもアガーテに積極的になることができない。そうこうしているうちにアガーテは苛立ちを募らせて夫のいとこと関係を持ってしまう。
もどかしい、切ないストーリー。「善良な」町長のためらい、消極的な態度、若くなくたって純情な人は純なのだ…
最後の展開はえらくシュールになってしまった感があるけれど、ロマンチックで楽しめた。
ありきたりな筋だけれども、伊達淳氏の訳も読みやすくてよい。
外国の小説を読むときの楽しみの一つは異国の町の雰囲気が味わえること。イチジク入りのコーヒー、ミントキャディー、公園、噴水、サーカス…そういうものの一つ一つもとても美しく描かれていました。
映画化したら素敵な作品になりそう。