北京陳情村 田中奈美

題名:北京陳情村

著者:田中奈美
第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作。
五輪で沸き立つ中国北京。土地の強制収用、冤罪、役人の腐敗などを中央政府に訴えるために、中国全土から「陳情者」が集まった村がある。解決率わずか0・2%の「陳情制度」に命を賭けた彼らの姿を、女性ルポライターが潜入し、接近し、取材する。
毎日、政治に対する不満がテレビとかラジオとかで語られているけれど、「いやー、日本はいい国だ。」と思わされてしまった。
中国はコネ・賄賂社会で、警察も、役人も、まるで頼りにならない。
「言論の自由」もない。
言ったもん勝ち。(勝つ率は低いが)ごね得。謙虚さを美とする日本人なら中国では3日で身ぐるみをはがされそう。
また中国の印象が悪くなってしまった。やっぱり、文化、宗教、道徳をないがしろにすることは国を不幸にすると思う。
筆者のエネルギーにも脱帽。あとがきで筆者は「この国には、どうにもならないような混沌と不条理が少なくない」としながらも、アグレッシブに生きる中国の人々から我々は学ぶところがあると言っている。
確かに、日本人は「おかしいよ」と思っても訴えないことが多い。エネルギー不足かも。
しかし、漢文で勉強したあのすばらしい中国の倫理は何処へいったのか?
寂しい限りだ。