「vertigo」とは「めまい」の意。なぜ「ミスター・ヴァーティゴ」なのかは物語の中盤まで読まないとわからない。
伯父のもとで育ったウォルトは、九歳のとき、イェフーディという男に引き取られ、空中浮揚の修行をさせられる。厳しい修行の末、浮揚できるようになり「ウォルト・ザ・ワンダーボーイ」として人気を博し、金を稼げるようになる。だけど悲劇も待っていて…
77歳になったウォルトが9歳からの人生を振りかえるかたちで物語は進む。まさに浮いたり沈んだりの過酷な人生。禍福はあざなえる縄の如し!というストーリー。おとぎ話ではあるんだけど、読み応えがあった。
寓話だから、人生におけるさまざまな要素が示されているようだけど、それをいちいち読み解くのは私の趣味ではない。(というか、できない)
一人の人間の成長物語として、面白く読めた。愛を知らない少年が、愛を知るようになる。そこが好き。浮き沈みの激しいウォルトの人生。トータルで見たら「沈み」の方が大きいんだけど、それでも愛を知らない人生よりは、マシだ。