バースディ・ストーリーズ

今年の誕生日ももう終わってしまった。この歳までまずまず健康で生きられたことはめでたいので自分で赤飯を炊き、大好きな和菓子を食べて祝った。友人から電話やメールも来て、非常にありがたかった。
でも、今までの人生の誕生日を振り返ってみると、20歳の誕生日は確か涙…だったし、いい日ばかりでもなかったような気がする。
『バースディ・ストーリーズ』は海外の、誕生日にまつわる短編を村上春樹が10編選び、訳している。
誕生日だからといって幸福な話はむしろ少なく、読み終わった後に「へ?」と置いてけぼりを食らったような感じを受けるものも多かった。
気に入ったのは、因業な老婆を主人公にした二編。私も、もし将来独居老人になったりしたら、因業でかわいげのない老婆になって、自分の誕生日を孤独にどっぷり浸りながら盛大に祝いたい。
誕生日にひとりぼっちだったら、誰にも祝いの言葉をかけられなかったら、他の日よりももっと孤独を感じる。でも別にそれも悪くないと思う。
読みやすかったのはやはり最後の村上春樹自身の短編。翻訳ものはすんなりと入っていきにくい。言語は文化を背負って成り立っているものだとつくづく感じる。
安易に、誕生日プレゼントになどはしないほうがいい本です。