タクシー王子、東京を往く。  川鍋一朗

日本交通というタクシー会社の三代目社長が、新人ドライバーになって一ヶ月、タクシーに乗務するというノンフィクション。
この人の経歴がなんかすごい。1970年生まれ、慶應卒、ノースウエスタン大学でMBA取得。34歳で家業を継ぎ、当時1900億円の負債を抱えていた会社を経営改革で立て直した、という。
容貌は、まあハンサムという人もいるだろうな。
一ヶ月の営業収入は平均以上で、売り上げ83万円の62%が給料になり、48万円強。なかなかすごい。タクシー運転手の年収は500万円台だというのにビックリした。もちろん、あくまでも東京での話。田舎では無理だろう。みんな車持っているし。私もよっぽどの時しか使わない。
なんか、普通の乗務日誌なんだけど、新人ドライバーらしく、どうやったら営業収入を増やせるかに腐心し、お客様との人間同士のやりとりに一喜一憂する。文章から伝わってくるのはひたすら、この人の明るさと前向きさ。こういう人でないと、経営建て直しは難しいんだろうなと思う。謙虚な人柄が伝わってきて好感が持てた。もちろん、謙虚な人でなければ、水戸黄門や暴れん坊将軍みたいに実際の社員の体験をしてみようとは思わないだろう。
タクシーといえば荻原浩の『あの日にドライブ』も面白い作品。元エリート銀行マンの主人公が挫折して、ほんの腰掛のつもりでタクシーのドライバーになる。そして、過去を振り返りつつ自分を再生していくという物語。再生話よりも、タクシードライバーの日常の描写が面白く、ちょっとやってみてもいいかも、と0.1秒思わせてくれた。