スノーホワイト 谷村志穂

芥川龍之介は『侏儒の言葉』の中で
〈わたしは第三者を愛する為に夫の目を偸んでいる女にはやはり恋愛を感じないことはない。しかし第三者を愛する為に子供を顧みない女には満身の憎悪を感じている。〉と書いている。
侏儒の言葉/文芸的な、余りに文芸的な
世に不倫話は多いけれども、不倫話が美しくあるためには、やはり子供がいないこと、って重要なのではないかと思う。あと、お金の心配がないってことも。
江國香織の
東京タワー
は、年の差二十ぐらいの不倫もの。大学生の透と、仕事を持つ人妻詩文の恋愛を描いている。
透の視点から描かれていて、岡田准一×黒木瞳で映画にもなった。(映画は原作のよさが失われていた。寺島しのぶがすごくよかったけど)
世の中年女性にときめきと希望を与える作品のようにとらえられるかもしれないけれど、若い男子の純情と、自分の想定内で恋愛を進めようとする中年女性の卑怯さとダメさ加減がよい小説だったと思う。子どもなし、お金の心配なしで、物語は美しい。
さて、谷村志穂の新刊、
スノーホワイト
これは不倫ではないが、かなりの年の差だ。主人公の大学生は21歳の男子、ヒロインは45歳で、介護を仕事にしている独身女性。まさに「親子ほど」歳の離れた二人の話だ。
コンビニでアルバイトをしている大学生が客としてきた女性に次第に心ひかれ、通じ合い、ためらい…連続恋愛ドラマみたいな感じ。おとぎ話ではあるけれど、男子がヒロインに魅力を感じることができるのがすごいと思った。これも映画化して、世の中年女性に希望を与えるのかしら。
自分のことを客観的に見る目を持っていなければ。もし私が20も下の男の子に言い寄られたら、まず詐欺にひっかけようとしている、と警戒することにしよう。あんまり心配なさそうだけど…