わたしたちが孤児だったころ
作者:カズオ・イシグロ 訳:入江真佐子
ちょっとミステリめいた長編小説。
1900年代初め、上海で暮らしていた英国人クリストファー・バンクスは十歳で父母が行方不明になり、孤児になった。
貿易会社に勤める父と美しい母。どうやら当時問題になっていたアヘン貿易絡みの事件に巻きこまれたらしい。
イギリスに戻り、伯母の助けで名門大学を出て探偵になったクリストファーは日中戦争が勃発し混迷を極める上海に両親を探しに舞い戻る・・・というお話。
10歳で両親と生き別れたら、両親像は「聖なるもの」になるだろうけれど、果たしてやっと判明した両親失踪の真相はいかなるものだったのか。人生はそれほどスイートではない。
同じく上海で子ども時代を過ごしていた幼なじみの日本人、アキラや、クリストファーがひきとった孤児のジェニファーなど、誰もが「孤児」の側面を持つ。
20年も昔の事件のために戦争中の上海にのりこんでいくなんて、ちょっと非現実的なんだけれど、カズオ・イシグロならではの静かな筆致で許される感じ。
懐古的で上品なミステリ、といった趣でした。