らいほうさんの場所  東直子

らいほうさんの場所

作者:東直子
短歌で有名な東直子氏の小説。不思議な小説だった。
主人公は占い師の志津。40過ぎかな?インターネットで月別の占いを配信し、「シスリー姉さんの占い」としてそれなりの人気がある。
一緒に暮らすのは公務員の妹、真奈美と、軽い知的障害があるかと思われる弟のシュン。
シュンは毎日稲森という男に迎えに来てもらって、工事現場で働いている。
志津はマンションのベランダのある一角を「らいほうさんの場所」と名づけ、花を飾ったり、とても大事にしている。でも、らいほうさんの場所に何があるのか、どういう意味があるのかは謎。この場所が、この家族から来客を遠ざけているようだ。
ある日、志津のもとに昔占いをしてあげていた女性が子どもをつれて突然やってくる。いきなり子どもを置いていき、夜まで引き取りにこない。しかしいつの間にか、朝のうちに子どもを引き取っていったもよう。
この女が非常にずうずうしくて、ずかずかと志津たちの生活に入り込み、不愉快かつ不安な気分にさせる。
らいほうさんの場所とか、シュンの自殺未遂とか、「謎」は最後まで放置されてすっきりしないといえばすっきりしない小説なんだけれど、面白く読めた。
登場人物のキャラクターの描き方も丁寧で鮮やか。日常の人間関係に潜む「悪意」をさりげなくリアルに描いている。
家族の中ではいろんな問題が起きるけれども、それは外部からは見えない。昔に比べればさらに、家族は閉鎖的な状況になってきていると思う。「標準的」な家族像の崩壊…
家族はますます「閉じた」存在になってきていることを思わせられる小説だった。